民法・商法(会社法)・憲法の勉強法(行政書士)

民法の勉強法

 独学であれ予備校であれ、テキストの民法のページに記載されている知識は理解し暗記しなければいけません。しかし、行政書士試験の民法は高度な内容ではないため、テキストを何度も読み、問題集を解くことで十分でしょう。民法の条文を引く必要も全くありません。テキストの知識で十分試験対応可能です。
 但し、留意すべきは、暗記するにあたって、丸暗記はダメです。理解した上で暗記することが必要です。民法はそもそも一般生活上の問題を解決するための法令ですから、理解し暗記することもそれほど難しくはないはずです。理解することで、記述問題も解きやすくなります。


 記述は民法から2題出題されます。平成24年度は「保証人の抗弁権」と、「相続人の遺留分減殺請求権」についてでした。法令択一で156点(満点184点)を取り、一般知識で24点以上を出せば理論的には記述は0点でも合格できますが、さすがにちょっと現実的ではないように思えます。単に、問題集を多くやるのみだと、記述でつまずいてしまうこともあるため、しっかりとテキストを読込み理解することをお勧めします。
 記述というと難しそうですが、難易度は低く問われる内容はごく基本的なものです。読込みをしっかりしていれば十分解答できるはずです。
 記述の配点は民法で2問40点満点です。採点は行政法の記述と合算され、民法40点、行政法1問20点の合計60点満点として示されます。私の経験則上採点は意外とシビアですが、3問全て記入できれば細かいミスがあったとしても、20点を切ることはないと思います。択一の点数は1問4点であることを考えると、それでも5問分になるわけですから、記述で点を取ることが出来ればその分、法令科目全体が楽になります。
 記述試験ですが、上記のようにテキストを理解し暗記することに努める以外、特段の用意は必要ありません。予備校の答練では記述の練習もあるようですが、一切不要です。意味がないとは言いませんが、費用対効果が低すぎます。何故なら、形式が決まっておりその通りに記載をしなければならない訳でもなく、時間的にも数分程度で書けてしまう程度の文字数です。
 つまり「書く練習」をするほどの問題ではなく、「書く練習」をするのであればその分民法のテキストを読込んだ方が有意義です。


 問題は45字以内で「〇〇〇の場合にどうすべきか」という内容で聞かれることが多く、例えば平成24年度の問題は下記の通りです。


平成24年度 問題45 民法記述(省略記載)
「AがBに金銭を貸し付け、Cが保証人となった(連帯保証人ではない)。Aが弁済期にBに返済を求めたところ、BはCに請求するように求めた。Cはどうすれば弁済を拒めるか」
 括弧書きの部分「(連帯保証人ではない)」この部分は実際の問題にも記載があります。何が言いたいかというと、特にひっかけもなく、むしろこのように論点が強調された分かりやすい問題であることを知ってほしいのです。
 答えは「Bに弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易なことを証明すれば弁済を拒むことができる」などの書き方で良いでしょう。「書く練習」よりも、論点である検索の抗弁権をしっかりと理解しているかが重要で、それさえ記憶していれば、「書く」ことは難しくありません。

商法(会社法)の勉強法

 行政書士試験の会社法は、基本知識のみです。「機関」、「設立」、「募集株式・新株予約権の発行」、「持分会社」、「組織再編」、「株主の権利」、「解散」、「株式について」と分野は広いように見えますが、問われる内容は深くはないので暗記で乗越えることが十分可能です。ごくごく基本的な問題しか出題されません。ひっかけ的な問題もほとんどありません。このレベルの問題であれば、テキストの読込みを重視するより、過去問で問題を解きながら覚えた方が効果的と考えます。
 2~3回ほどテキストを読み(フォントにもよりますが100頁ほど)、過去問を解き、分からなければテキストに戻ることを繰り返すことで合格レベルに達すると思われます。

憲法の勉強法

 憲法もテキストと問題集で勉強することで基本十分ですが、憲法は条文も合わせて読んだ方が無難です。穴埋め問題が出ることがたまにありますが、条文を読んでいない限り解答不可能な場合があります。憲法は103条から成りますが、全ての条文を読む必要はありません。重要条文(テキストで項目として説明されている条文など)および前文などを使われている文言に気を付けながら読むことで十分です。


 憲法においては、基本的人権および統治機構の2つの大項目から出題されます。基本的人権の勉強方法は判例の理解です。判例の結論はもちろんですが、重要判例などはその判旨(何故そういう判決を裁判所が下したのかについて)も目を通しておくべきです。


例)指紋押捺拒否事件(最判7.12.15)
在留外国人が指紋押捺制度の違憲性を争った→判決「違憲ではない」
判旨「在留外国人には指紋押捺を拒否する自由を有するが、制度は公共の福祉のために必要がある」


 上記「指紋押捺拒否事件」で説明すると、「違憲ではない」という結論だけでなく、「在留外国人には指紋押捺拒否する自由がある」という判旨の部分も知っている必要があります。違憲か、違憲でないかの結論のみを覚えるだけだと正誤を導き出せません。


 重要判例には、予備校はもちろん、良質のテキストであれば必ず太字でこうした判旨が強調され記載されているはずですので、それは絶対覚えてください。
 統治機構分野は、国会・行政は単純暗記です。行政書士試験の統治機構分野では、相当細かい論点が出題されます(例えば衆参各議員定数など)。テキスト上で強調されている部分だけではなく、テキストに記載されている論点は全て覚えた方が良いでしょう。例えば、「特別会」についての知識であれば、行政書士試験以外の資格では、「衆議院の解散後に開かれるのは特別会」で十分ですが、行政書士試験においては「解散から40日以内に総選挙、総選挙から30日以内に特別会」あたりまで踏込んだ知識が必要となります。良質のテキストであれば、この辺りの細かい論点も記載されているはずです。