行政書士試験概論(行政書士)
司法書士試験に比べると運要素が強いです。
宅建、行政書士、司法書士の3試験のうち、私が最も運の要素が強いと感じたのが、行政書士試験でした。もちろん最低限の実力は必要ですが、同じ能力の受験生が、同じ量の勉強をしても、必ずしも両者とも合格するとは限らない印象を持ちます。
例えば、司法書士試験の場合、体調等によって左右されるのは別論として、実力があれば確実に合格必要点を取ることが可能です。勉強すべき内容が行政書士に比べてより高度であり、かつ、広範囲であるために、難易度はかなり上がりますが、勉強の成果を本試験で出すことができれば、運で左右されることはまずありえません。
行政書士試験において、他の資格試験に比べて運の要素が強いと申し上げたのは、政治経済社会分野の一般知識問題の存在があります。政治経済社会の範囲は広く、これを全て網羅するとなると相当な分量の知識を吸収しなければなりません。まともに問題化されうる論点を全て覚えようとすると、膨大な時間が必要となります。
しかし、問題は、一般知識科目においても、基準点の設定があり、基準点を下回ると法令科目でどんなに点数がよくても不合格となってしまいます。それゆえに、しっかりと勉強しなければならないのですが、果たしてどの範囲までやるのが適切なのかが判断しにくいのです。
政治経済社会の勉強においては、ある程度の割切りが必要になってきます。細かい分野にまで手をつけるときりがなくなってしまうのです。テキストに記載されている論点は覚えるのは当然ですが、それ以外は捨てる勉強方法が基本です。その結果、それプラスαの知識があるかないか、自分の知っている知識の問題が出るか出ないかに大きく左右される場合があります。こうした自分の今までの人生で培った知識等も実力といえば実力ですが、範囲を明確化しにくい分野であり、しかもそれが足切りの対象となるため、他資格に比べると運の要素が強いと言えます。
また、法令科目においても、問題内容に首をかしげるような内容の問題がたまにあります。例えば平成24年度の第41問は、「公教育についての最高裁の判例」の一部を抜粋した憲法の「多肢選択式(穴埋め問題)」でした。
まず、題材自体の判例は、「憲法で規定される教育を受ける自由、つまり教育権の所在はどこにあるか」という有名な「旭川学テ訴訟」を題材にしているため、題材としては問題ありません。しかし、その穴埋め部分が憲法の問題としては若干疑問を持つような形式でした。穴埋め4問中のうち1問は憲法を勉強していれば確実に取れる内容、残り3問は、まず受験生の誰も覚えていないような判決文からの単語穴埋め問題でした。行政書士試験において、長文の判決を暗記している受験生は皆無でしょうから、こうなると、私もそうでしたが、国語力を駆使して解答するしかなくなります。判旨をもとに推量することは可能と言えば可能であったのですが、憲法よりも国語力を問う方向への比重が強すぎるように感じます。憲法の理解を問うべき問題としては不適切だと考えます。
しかし、法令科目においては、このように若干の曖昧な出題があるものの、概して難易度は低く、民法、商法(会社法)、憲法においては、司法書士ほどの知識は要求されません。唯一、行政法のみは、メイン科目であるだけあって、広い知識が要求されます。
全体としては、300点満点中180点、つまり6割程度の正解率でよく、また司法書士のように受験生の平均点で基準点が変わることもありません。そのため、法律系資格試験としての難易度は高くはなく、宅建よりも若干上の資格試験といえます。
(1)法令科目の合計点が122点以上であること
(2)一般知識の合計点が24点以上であること
(3)試験全体の合計点が180点以上であること