【司法書士試験】各論 会社法-理解<記憶 

会社法の勉強方法とは

 会社法は実体法と手続法で構成されています。実体法とは、規範自体をその法において定める法のことですが、会社法においては、各会社類型における必須機関の規定などはこれにあたり、一方、機関の一つ株主総会を開催するにあたり、原則、2週間前に株主に通知するなどという手続は、まさに手続法にあたります。
 ところで、他の司法書士試験科目に目を向けると、民法と不動産登記法、民法と民事訴訟法も実体法と手続法の関係にあたります。また、試験科目ではありませんが、刑事訴訟法は実体法である刑法の手続法にあたります。

 つまり、司法書士試験においては、実体法として、民法、刑法、会社法(商法)がある訳ですが、会社法はこの3つの中で実は最も簡単です。
 こう言うと、意外に思われるかもしれませんが、民法及び刑法は、これまでブログで述べてきた通り、それぞれ論点の構成要件を確実に抑える必要があり、問題を解くにあたっても、要件に該当するかを慎重に検討しなければなりません。
 これに対し、会社法は、手続法の部分は言わずもがな、実体法の部分においても、論点毎に要件が幾つもある訳ではなく、言わば「規定」に過ぎませんから、ある意味単純暗記で各論点を抑えれば済みます。もちろん、単純暗記といっても、会社法における機関、株式、設立、解散、募集株式・予約権の発行、組織再編、持分会社、特例有限、商法の各分野において、それぞれの意義や手続きの流れは理解しなければならないのは言うまでもありません。しかし、そうであったとしても、民法、刑法に比べるとやるべきことの比重を理解よりも暗記により傾けることが可能です。
 こうした単純暗記の側面が強いにも拘わらず、会社法を苦手としている人が多いのは、単に元々の馴染みが薄いことにより理解しにくく、また、理解したとしても、会社に関する規定は全く面白みもない無味乾燥としたものであるため、記憶に留まりにくいことが原因と思われます。
 これを打破するには、同じ性質をもつ民訴等にも言える事ですが、中途半端な記憶ではなく、論点をしらみつぶしに抑え、他の分野以上に完全記憶を心掛けるしかありません。例えば、民法においては、日常生活に係る法であることもあり、記憶も比較的し易いことと思われますが、そうした側面が会社法には全くない以上、民法以上に記憶作業を徹頭徹尾行うしかないのです。同様に、忘れやすい分野であるならば、より繰返しによる記憶の補完を図るしかありません。残念ながら、こうした暗記の方向性が高い科目においては、何か画期的に楽に勉強ができる方法などはなく、このような地道な作業を行うしかないと考えます。
 記憶作業は、テキストを読み込むことが基本となると思いますが、とにかく、中途半端な覚え方ではなく、しっかりと完全に論点を暗記することです。おそらく、最初は相当きつい作業となると思われます。また、その瞬間は覚えていても、数日後には忘れてしまうことも多いでしょう。しかし、何度も何度も記憶しようと努めることにより、次第に記憶が明確化され、結果会社法の苦手意識は消えていきます。
 完全に全論点を記憶するとは、会社法の場合は手続きと規定について覚える事を意味します。正直なところ、会社法を学ぶ上で、何故株主総会を行うのか、また何故会社分割を行うのか、何故株式移転を行うのかなどの理解はほとんど必要ありません。もちろん、意義についてはある程度知っておく必要がありますが、細かい実務で必要になるところまでは踏み込む必要はなく、手続きの方法と規定について、あくまでも会社法上に記載されていることを覚えれば済みます。
 例えば、株式移転について言及すると、一般に実務上で、非公開会社において株式移転をする理由は、相続対策が多いのが実情です。詳しい説明は省きますが、相続の対象たる株式の評価額が高いと予想される場合に、持株会社を事前に設立しておき、税務上の類似業種比準価額方式によって株式評価をすることができれば、相続税納付額が減少するというのがそのスキームです。このように、株式移転一つを取っても、その完全な理解を得るためには、会計・税務の知識が不可欠ですが、もちろんこれらの知識は試験には全く関係ありませんし、覚える必要もありません。
また、種類株式の内容においては、それぞれ各種類の内容を設定するには意味がありますが、設定の前提となるそれら背景については考慮することは必要ありません。
 つまり、会社法の勉強においては、深く踏み込むことなく、ある意味テキスト記載の知識のみを淡々といかに多く覚えるか、すなわち、単純暗記で記憶を明確に保つことの方が重要です。
 従って、あまり難しいことは考えずに、各手続きおよび規定について、1つ1つしっかりと記憶していくことに努めれば択一で高得点を挙げることも難しくありません。このような科目においては、例えば、学生時代に誰しもやったであろう、英単語の記憶をするにあたって、カードに書き出して覚える方法のように、別紙に論点を書き出して記憶する方法も有効です。
 下記は、「全般的な勉強方法」の記事において、既に掲載した画像です。私の場合は、会社法もこのように論点を全て書き出して記憶を致しました。テキストを読み込むのみでは、何時になっても記憶の不明瞭感が抜けなかったため、このようにして全論点を確実に記憶するように努めました。もちろん、ずっとこのような方法を取る必要はありません。こうした方法によって記憶を明確化した後、テキストに戻り読込みを継続すればよく、また、テキストの読込みも、一度記憶が明確化されると、手続法的な単純暗記の側面が強いこともあって、民法等に比べるとより速いスピードで読めるようになるはずです。

実際の書出しリスト1
実際の書出しリスト2

私も、初学時においては、会社法を非常に苦手としていました。前述の通り馴染みがなく、しかも手続法的な側面が強いため、覚えても覚えても、何か常に記憶がおぼろげになっているような印象でした。しかし、とにかくまずは単純暗記で論点を記憶することに努め、何度も上記の書き出しによるチェックを行ったりやテキストを読み込むことにより、最終的には会社法が最も得意な科目に変わっていました。
 会社法の習得度は、当然、商登法に大きく影響します。また、商登法記述にも影響するのも言うまでもありません。
 したがって、会社法については、絶対に妥協することなく、しっかりと記憶することがより一層重要となります。会社法が得意科目になれば、商登法も得意科目になりますが、反対に不得意科目であれば、商登法もそうなってしまいます。
 手続法的な側面も強い会社法は、初学者の方にとっては勉強に非常な苦労を要することと思います。しかし、これは誰しもそうであって、結局のところ、こうした苦労を厭わずに勉強した者が最終的には合格へと至ります。自分を律し、テキストに書いてあることは、確実に答えられるという段階まで妥協せずに持っていくことです。なんとなく理解しているだけで、一応過去問も解けるからと安心しているだけでは、何時まで経ってもリスクを抱えている状況といえ、そうしたリスクはいつ発現してしまうとも限りません。

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【司法書士試験】各論 会社法-理解<記憶 ” に対して2件のコメントがあります。

  1. アチ より:

    合格後のブログの場所が分かりやすくなってましたね!
    ちょっとした変化ですが、訪れた方が多く合格後のブログに飛ぶことになりそうです。
    合格後のブログも、事務局の方とのやり取りがあって面白いです。そのうち、合格後のブログから、こちらに飛ぶこともあると思います。
    今年の試験は商業登記法で死にました。ただ、間違えた問題のアシの正答率は70%でした。思った以上に皆さん手を広げて勉強できてる印象でした。会社法関係は段々難しくなっている印象なので、カッチリ覚えていきたいと思います。要件で出てくる数字は、長期記憶難しいです汗

  2. @40 より:

    >アチさん
    アチさんのご意見を参考に少しいじってみました。ありがとうございます。
    商登法択一の肢正答率が7割あるのであれば、あとはおそらく細かい論点が不足しているのだと思います。
    例えば、商登法というより会社法の問題ですが、
    「全部取得条項付株式を現実に発行する決議をする際に、反対する株主は会社に対し買取請求ができる」という問題があった場合に、答えは「×」となります。反対株主買取請求は、全部取得条項付株式について定款に定めを設けるときには可能ですが、現実に発行する際には、「取得の価格の決定の申立て」を裁判所にすることができるのみで、買取り請求はできるという規定はありません。
    非常に細かい論点ですが、このあたりまで、しっかり理解しているかが、今後は特に得点できるかのカギとなると思われます。
    11月に入り、徐々に勉強もペースアップされ、大変かと思いますが、頑張ってください。

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