みなし解散の通知

 令和3年10月14日付けで12年以上登記していない株式会社及び5年以上登記していない一般社団法人、一般財団法人に対して、管轄登記所から法務大臣による公告(2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく,登記もされないときは,解散したものとみなされる)がされた旨の通知が発送されました。

 登記所からの通知後も、所定の届出を行わず、かつ、役員変更登記の申請も行わなかった場合、公告から2か月経過後に、登記官が職権で解散の登記を記録することとなります。

 最長で10年である役員任期にさらにプラス2年した12年もの間、何も登記をしていないのであれば、実体がない休眠会社である可能性が高く、そうした実体がない会社をそのままにしておくことは、登記の信頼を損ないかねず、また、犯罪等に結び付く恐れもあることから、毎年、この時期に行われている会社等の整理作業です

 司法書士であれば、世間一般において、役員の任期及び選任手続を失念している会社が意外と多いのはご存じのとおりです。私もこれまで、何度か、いわゆる選任懈怠後の役員変更登記を申請しています。登記所からの通知がきて、ビックリして依頼してきた方もいました。

 中には、そもそも役員に任期があることすら知らない方もいます。しかし、私も司法書士でなければ、じっくりと会社法などを確認することはないでしょうから、それも仕方のないことかもしれません。

 選任懈怠に基づく役員変更手続自体は、株主総会議事録や株主リストなどを作成するという点においては、通常の役員変更登記と一緒です。しかし、手続きに際し、任期の年数やその根拠、任期の起算日や満了日の考え方についても説明し、理解してもらうこととしているため、結構そうした説明作業が大変だったりします。

 また、後日、裁判所から過料決定の通知がくるであろうことも説明していますが、いつも幾ら位になるかを尋ねられます。ただ、そもそも過料決定がされるかどうかも確実ではなく、その過料金額も何か基準があるわけでもないため、目安を伝えることしかできません。1年懈怠で1万~2万円程度、そんなアバウトな感じで伝えることしかできません。

 ところで、これまで私は選任懈怠ではない「登記懈怠」に基づく手続きをしたことはありません。実際、選任はしたけれど、登記を忘れるような場面は、実務上、あまり想定できません。税理士等の他士業が定時株主総会議事録を作成し、そのままになってる状況も可能性としてはあり得ますが、現実的な話として登記だけを怠ることは考えにくいような気がします。

 登記懈怠と選任懈怠を比べると、なんとなく、まだ選任行為はしている登記懈怠の方がイメージが良いようにも感じますが、私が知る限り、懈怠種別により過料金額の差があるようにも見受けられません。仮に、もし過料の軽重に差があり、登記懈怠の過料金額が低いのであれば、登記懈怠ばかりにもなりかねないため、こうした傾向は当然ともいえます。

 また、司法書士は、実体上の行為をもとに登記することが職責として求められている以上、将来のアドバイスであれば何の問題もありませんが、過去の行為について助言し、都合のよい手続きをすることも憚られます。

 こうしたことから、懈怠に基づく手続きをするに際しては、大抵というか、ほとんどの依頼者から選任自体を忘れていた旨の説明があり、結果、選任懈怠をもとに登記することとなります。

 ところで、つい先日、役員変更の依頼が飛び込みでありました。この時期なので、もしかすると、通知がきたのかな?と一瞬思いましたが、登記情報を取得すると、5年前に役員住所変更登記が申請されているため、そうではないようでした。話を伺ったところ、本人申請であらたに住所変更登記を申請をしようとしたところ、登記官から、役員の任期切れを指摘されたとのことでした。

 役員1人の株式会社、本来の任期は3年前まででした。これまでと同様に、依頼者に会社法の規定について説明し、選任を懈怠した旨の株主総会議事録を作成し手続きしましたが、ふと、もしこの依頼者が、本人申請で法務局に行っていなければ、5年前の住所変更登記から12年後、つまりあと7年懈怠状態であることを気づかずにいたこととなり、懈怠期間は10年となっていたことでしょう。

 正直なところ、私が経験した事例は、いつも懈怠期間3年程度が多いのですが、巷では10年以上の懈怠も実際に発生しているようです。その際の過料は、概して10万円程度となると聞いています。

 会社法976条では、その金額は100万以下となっており、これは、不動産登記上の義務を怠った場合などと比べても、かなり高い金額となりますが、さすがに100万の過料になることはないようで、数万円~10万円程度が相場のようです。

 数万円でも、10万円でも、本来であれば不要な痛い出費であることには変わりありません。10年任期の場合、10年毎の手続を覚えていることは、簡単ではないのも承知していますが、この時期は、選任手続きをすることの重要性を再確認し、いつも、「ああ通知の季節か」と感じたりします。

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