共有持分の登記記録

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 先日ある登記において、共有持分を売買により移転する申請を行いました。

 特段、難しい申請ではなく、ごく一般の所有権移転(持分移転)登記でしたが、少し判断に迷うことがありました。法的な話ではなく、登記システム上の話しですが、備忘録的な意味もかねて投稿します。

 

一括申請と登記の目的

  

質疑応答6436

甲が4分の1、乙が4分の1.丙が4分の2を共有している物件につき、甲に対し、乙持分全部と丙持分の4分の1を移転する場合の目的は、「乙持分全部、丙持分4分の1移転」として一括申請できる。

 先日の申請は、マイホーム建築のための一般的な土地売買登記でしたが、以下のような登記記録でした。A土地の全部とB土地の甲乙持分各666分の1(合わせて333分の1)を売買により移転することとなりました。要は、本事案は、昭和期の大規模分譲地(300区画以上)の一区画を移転するものですが、各区画所有者がB土地(1区画につき持分333分の1)を共有しており、区画を売買する際には、B土地の共有部分も一緒に売買するわけです。

 なお、B土地については、順位番号300番の甲乙持分を移転し、順位番号400番はそのままです。400番の登記は、甲が、分譲地内の他の区画を単独で購入した際に、その区画所有者持分として移転されたものです。

A土地(区画/底地)

順位番号1(昭和60年売買)

 共有者 持分2分の1 甲(〇市〇番地の1)

 共有者 持分2分の1 乙(〇市〇番地の1)

 

※分譲地を甲乙の共有で購入

B土地(共有地)

順位番号300(昭和60年売買)

 共有者 持分666分の1 甲(〇市〇番地1)

 共有者 持分666分の1 乙(〇市〇番地1)

順位番号400(平成20年売買)

 共有者 持分333分の1 甲(〇市〇番地1)

※順位番号400番は、甲があらたに取得した部分

 A土地については、登記の目的を『共有者全員持分全部移転』とすることとなります。

 一方、B土地については、甲乙を登記義務者として一括申請できることは、上記質疑応答から判断できましたが、甲の住所が異なっているため、目的をどう記載すべきかにつき、少し検討が必要でした。

 以前も住所の記載について投稿したことがありましたが、この〇市では、ある時期より、番地と枝番の間にあった「の」が無くなりました。上記300番の甲と400番の甲は、同一人であり、また、登記申請上も名変は当然に不要ですが、コンピューター化が進んだ現在、法務局のシステム上は別人と判断されるようです。

 まず、上記先例を参考に、『甲持分666分の1(順位300番で登記した持分)、乙持分全部移転』とすることを検討しましたが、そもそも甲の持分は300番と400番で区別されており、今回は区別された300番の甲持分全部を移転することを考慮すると、「持分666分の1」とさらに特定する必要はないことに気づかされました。

 次に、『甲持分一部(順位300番で登記した持分)、乙持分全部移転』とすることも検討しました。甲は、順位300番と400番で持分があり、その全体に対する一部という意味です。しかし、登記システム上、順位300番の甲と順位400番の甲は別人と判断される可能性もあることを鑑みると、むしろ、次のようにすべきではないかと考えました。

 『甲持分全部(順位300番で登記した持分)、乙持分全部移転』

 最終的に、この目的でオンライン申請をし、特段補正の連絡もなく、この目的とおりに記録されました。

 というか、おそらく、仮に当初の目的で登記したとしていても、法的な瑕疵とはなり得ませんので、単純な目的補正だけで済むだけかとも思います。もしかすると、補正にすらならず、システム上の問題(以下参照)ということで、処理されるかもしれません。しかし、そうであっても、少し頭を悩ましましたが、色々と勉強できた良い申請となりました。

補正とはならずシステム上で処理される相続移転

順位番号1 持分3分の1被相続人甲(住所A)

順位番号2 持分3分の1被相続人甲(住所A)

順位番号3 持分3分の1被相続人甲(住所B)

上記の場合に、相続を原因として、特定の相続人1人に対し、目的を『所有権移転』として申請した場合に、以下のとおり記録される。

『甲持分全部(順位1番、2番で登記した持分)、甲持分全部(順位3番で登記した持分)移転』

※これは、5年ほど前の申請です。確かに法的には所有権移転で問題はありませんが、最近の法務局のIT化の流れ(出来るだけ事務を減らす取組み)を考慮すると、申請段階から記録ベースの目的に引き直して申請した方がよいかもしれません。

  

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