【司法書士試験】記述試験の勉強方法

記述試験対策は、問題を解くこと以外に、必勝法はありません

 私は平成24年度の試験において、択一足切りとなりましたが、仮に択一が基準点を上回っていたとしても、不合格でした。記述がほぼ白紙だったのです。
 試験において問われた論点は、確か「遺言による遺産分割方法の指定」と「有限会社の商号変更」だったと思います。問われている内容は分かったのですが、それを答案に落とし込む基礎学力が決定的に不足していました。そのような私が、どのようにして、記述の学力を向上させたかについて述べたいと思います。

 記述の解答力の向上は、問題を実際に解くことしかありえません。私の場合、不動産登記法で基本論点を50程度、商業登記法で同様に50程度の基本論点をマスターするところからはじめました。使用したのは、LECの「書式ベーシック」です。この問題集で基礎を確認しました。初級者用ですが、試験に必要な論点が多数掲載されています。実際の試験では、この問題集では単一の論点として記載されていた問題が、複数の論点との組み合わせにより出題されるに過ぎません。
 なお、予備校においては「コーチング講座」等の講義があります。こうした講義は学力にはあまり意味がありません。概して「コーチング講座」は、どこに着目するかなどを体系立てて教えてくれるのが通常ですが、正直なところ記述で点数の差が生じるのはそうした着眼点や解法ではありません。
 コーチング講座で教えてくれる解法程度のことはどの受験生であっても分かっているものです。記述試験は、煩雑に提示された情報の中から必要なものを選択し、それをもとに解答を記入するわけですが、実はこれだけであれば難しくありません。
 記述試験の難しさは、そこに制限時間があることにあります。そのため、重要なのは、着眼点を学ぶことや解法ではなく、「時間内に自分で考えて答えを出す能力」「迅速に正確な判断を下す能力」であり、注目すべき点をいくら学んでも、それは前提能力に過ぎず、記述の解答力は向上しません。解答力アップのためには、アプローチの方法やもっともらしい名前のついた解法などは役に立ちません。
 私の場合、年末までに記述の基礎学力を「書式ベーシック」で高め、年明けからは週1または隔週1で答練が始まったため、そこで記述問題を解き解答力の向上に努めました。最終的に不登法・商登法各30問程度の応用問題をこなすことにより、当初に比べると自分でも解答力の向上が目に見えて分かりました。

記述試験対策はこれが重要です

  • 基本問題等(「書式ベーシック」など)で基礎学力を身に着ける
  • 応用問題30問程度を解く(本試験以上のレベルの問題)
  • 分からなくても解答を見ない
  • 白紙で終わらない
  • 制限時間を守る


 上記は、私が考える記述の解答力アップのために必要な要素です。当たり前のことしか言っていませんが、これらのことをしっかりと守って記述問題を解けば、確実に解答力は向上します。
 応用問題は予備校の答練を活用することを強く勧めます。市販の記述問題は、ある点において予備校の答練に大きく劣ります。独学の方は答練のみの申込みもできるので活用すべきです。
 実際の本試験は時間との闘いです。時間があれば解答できる実力は持っていたのに、時間が足りずに記述で解答ができずに不合格に終わった方は多くいます。それ故に、与えられた問題を制限時間内で解答する訓練が絶対的に必要です。市販の問題集には、解答用紙は通常付いておらず、各人それぞれが有しているノート等に記載をしていくことになります。この場合、時間は自己管理で制約を設けて訓練することは可能ですが、本試験の解答用紙を現実に見た際に、戸惑うこともあり得ます。
 また問題集それ自体もA5版やB5版が多くを占めますが、現実の問題はA4です。更に、本試験では不登法、商登法それぞれ5枚から10枚程度の添付書類が付いてくることが通常です。これらの添付書類をいったきりきたりしながら検討することも大いにありえます。本試験では、ホッチキスをはずしたりすることは許されません。こうした要式になれておかないと、本試験の際に本来の力を出し切れないことも無いとは言い切れません。

 司法書士試験は時間との闘いであり、さらに高度な知識を問うてきます。また受験生にとっては悪名高い足切りも存在します。こうした状況においては、できるだけリスクを減らして挑むべきです。そのためには、本試験と同様の形式で、かつ、時間内に解答する訓練を重ねているのと、重ねていないのでは大きな差が生じ得ます。
 以前のブログで、独学であっても、予備校の答練や模試は受けた方がよいと述べた理由は、こうした記述の訓練ができることも理由の一つです。
 次に、問題が分からなくても答えを見てはいけません。そして白紙で終了することも避けて下さい。予備校であれば、1回目の答練で白紙だった場合は、次回の答練までに少なくとも白紙で出すことのない程度までは、実力を高めておくことが必要です。
 白紙で出しては、本来その答練で養成すべき「時間内に解答することによる解答力の向上」が、全く図れないからです。
 答練を通して少しずつ記入できるようになれば良いという考え方は絶対にしてはいけません。答練を継続することで確かに少しずつ記入できるようになるかもしれません。しかし、年明けの段階でそのレベルだと、自分で考えて間違ってもいいから記入して解答力の向上を図っている他の受験生との差は追いつけないものになります。
 予備校の答練においては、記述の順位が表示されます。平均点なども見ることができますが、LECの答練では、常に0点の人が2割程度は存在していました。つまり、全く記載していないことを意味します。意外と、白紙やそれに近い答案で終えてしまう方も多いようですが、そのようなことのないように努めるべきです。
 私の場合は、年明けから記述答練が始まりましたが、初回のみは商登法が全く分からず、付属の答えを見て記入しました(予備校の通信講座は、問題と一緒に答えも同時に送られてきます)
 もちろん、これだと全く試験の意味を成さないだけでなく、前述の解答力の向上が図れないのは言うまでもありませんので、2回目の答練(1週間後)までには、会社法、商登法のテキストを最優先で読込み、間違ってもいいから最低限制限時間に書き終えるように努力しました。その後は、全ての記述答練で、時間内に解答を終えました。精度を欠く答案も多く、細かいミスは常に発生していましたが、こうした訓練が本試験に生きたのは間違いありません。
 どうしても記入できない場合ですが、その場合は根本的な実力が不足していることが明白です。予備校の場合、通学はもちろん、通信であっても提出期限が決まっているためそれを守りたい気持ちは分かりますが、提出期限を守って白紙で出してはもっと意味がありません。
 一度テキストに戻り再度読み込みをするか、また基礎的な記述問題を解くなどしてから、再度応用問題に取り組むべきです。何度も言いますが、絶対に白紙で出してはいけませんし、答練をやりながら記入できるようになればいいと考えてはいけません。必ず時間内に記入してください。それが解答力の向上に一番大切なことです。
 応用問題30問程度をこなすことにより、解答力は十分に合格レベルに達しているはずです。次に必要なことは細かいミスを減らすことです。記述においては、ミスはつきものです。完璧な答案はまずありません。不登法および商登法の双方で満点を取った人は未だいないと思うので、つまり100%の受験生が確実にミスをしますが、それ故にミスを少なくすればそれだけで基準点を上回り易くなります。
 ミスを少なくするには、当り前ですが、同じミスを繰り返さないことに尽きます。言葉で言うのは簡単ですが、実はなかなか難しい。私の場合はいつも「共有者全員持分全部移転」を「所有権移転」と焦って書いてしまう癖がありました。25年度本試験でも同じミスをしてしまい、目的の記載ミスがどのくらいのマイナスとなるのか分からないため、試験後に気づいた時に一瞬血の気が引いたのを覚えています。

 私がミスを減らすために取り組んだのは、同じ問題を繰返し解くという方法でした。

 記述の場合一度解いた問題は二度と解かない人もいるようですが、私は復習をすることをお勧めします。もちろん前提として、ある程度の問題数を既に解いていることが前提です。10問程度で繰返しをすればよいと言っている訳ではないので誤解のないようにして下さい。
 LECの答練では不登法・商登法それぞれ30問程度の問題を解くことになります。予備校の応用問題30題を解けば、論点はほぼ、網羅されており、これ以上他の問題をやっても試験に必要な新たな論点はほとんど出てきません。
 平成25年度の商登法で100%減資という論点が出てきましたが、実務では実際にありえそうな話であっても、試験においては特殊な論点と思われます。こういうのは別論です。ちなみに、「オートマチックシステムの商登法記述」にはこの論点が掲載されています。この論点を掲載していたというのは頭が下がります。私は初年度にオートマッチックを使用していたため、頭の片隅にこの論点が残っていたことにより、問題を解く上で随分助かりましたが、だからといってとにかく新たな問題をやり続けるのがベストとは思いません。
 特に5月以降は、新たな問題を解くのは、模試(4回~6回程度)の際で十分です。記述の場合は、自分で考えて書くという密度の濃い時間を経由しているため、そこで得られた解答力は、簡単には失われません。30問応用問題を解いたのであれば自信を持っていただいて大丈夫です。
 また、経験上、1度解いた問題であっても、1ヶ月も経てば忘れていることが通常です。2回目をやる際に、なんとなく見たことある感は残るでしょうが、十分に有効な記述の練習になります。私の場合は、LECの答練で解いた問題を3回程度繰り返しました。同じ問題をやった際に前回よりもミスが減っていないといけませんが、例えば下記のように別紙にミスを箇条書きするなどの方法も有効です。

記述書出1
記述書出2
記述書出3

 復習においても「実際に解答を記入する」ことが重要です。よっぽど分かり切った答え以外は、答案用紙に面倒でも記入することです。それにより徐々にミスを少なくできます。記述問題を解くには非常に時間がかかります。そのため、特に復習の際には、効率のために解答を記入せずに、頭の中で済ませてしまうことがあります。こうした勉強方法だと、過去には分かっていたはずの単純な論点であっても、実際の本試験において「あれ?書き方これでよかったっけ?」など記憶に穴が空く可能性があります。
 しかし、少しでも記述の記載にかかる時間を減らしたいのも事実です。私の場合は、省略記載できるものは省略し、しっかりと記載すべきものは省略しないことを心掛けて復習を行いました。
 例えば、不登法では、目的はしっかりと記載し、申請人の名前が「甲野太郎」なら「甲」と省略、原因日付は「平25.8.1売買」、添付書類においては、登記原因証明情報は「原」、識別は「識」などのように省略して記載して復習しました。
 商登法では、登記の事由は全部書き、登記すべき事項において、種類株式の内容の変更、新株予約権の発行など記載が多いものは省略記載していました。私の場合は、予約権の発行であれば、内容記載を間違わない自信があったため省略致しましたが、もし不安な場合は省略せずに記載した方がよいのは言うまでもありません。
 ここで申し上げたいのは、復習をする際に、よっぽど簡単すぎる論点以外は、頭の中で済まさずに、省略記載してもよいので、できるだけ答案を作成することです。そうすることで、論点の記憶にもつながります。

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