【司法書士試験】全般的な勉強方法

LECテキスト2

テキストを読み込んで、記憶の明確化に努めることが重要です

 全般的な勉強方法について記載致します。択一・記述の個別的な勉強法はまた後日記事にする予定です。

 既に何度かブログ上で述べたように、まったくの初見において、確実に理解し、記憶をすることは、よほどの天才でない限り不可能です。翌日に復習をしても、その数か月後に再度同じ場所を読んだ際には、きっとすっかり忘れていることでしょう。しかし、それが当たり前であって、合格者であっても、基本論点、例えば民法で言えば94Ⅱなどは覚えていても、細かい論点、例えば未成年後見人は裁判所の許可を得て辞任できますが、必要となるのは「正当な理由」であったか、あるいは「やむを得ない理由」が必要か、などの瑣末な論点はやはり忘れます。

 それ故に何度も繰り返しテキストを読み込んで、記憶が継続するように努める必要があるのです。

 資格によっては、例えば宅建などは、むしろ問題集を中心に勉強した方が効果的な場合もありますが、司法書士試験は、国家最難関資格の一つであり、過去に出題されたことがない問題形式で出題されることも珍しくなく、かつ、出題範囲も多分野にわたるため、宅建のような勉強方法では、不合格となる可能性が大きいといえます。表面的な問題集に頼ったのみの知識では、正誤を導き出すのは困難であるため、尚更基本知識をしっかりと身に着けるためにもテキストの読みこみが不可欠となります。

 初回、2回目、3回目と読み込みを重ねていく中のいずれかの段階で、テキストに書いてあるすべての事項を完全暗記する時期がきます。但し、理解し完全暗記することが前提です。意味なく文字だけを暗記するのは原則意味がありません(分野によっては単純暗記も必要になることもあります)。

 これは独学であっても、予備校であっても変わりません。何故なら、予備校のテキストであれ、市販書であれ、そこに書かれてある事項は全て試験において出される可能性があるものばかりだからです。

 予備校の場合、講師がAランク~Cランクのように重要度を示してくれることがあります。初学の段階であれば、これを目安とするのも良いでしょう。しかし、最終的には全て理解し暗記することが必要です。予備校のテキストで覚えなくてよいのは、講師が「絶対に出ない」と言明した部分のみです。他はいくら重要度が低くても確実に覚えるようにすべきです。

 暗記作業は非常につらい作業です。しかし、この作業は、独学の場合はもちろん、予備校においても必要となります。何故なら、予備校は暗記の手助けまではしてくれませんから、結局のところ、独学と同様に、自分で覚えるしかありません。

 その段階がいつなのか、どのように暗記すべきかについては、個々人によって異なるため一概には申し上げられません。テキストを読込むだけで暗記できる自信があるのであれば、読込みを続ければ良いし、そうでなければその他の方法を考える必要があります。分野によっては、テキストの読み込みだけで確実に全論点が把握できるものもあれば、別紙に自己の筆跡で書き出すことにより覚える必要がある分野もあるでしょう。

 いずれにせよ、完全暗記を心掛けるべきです。中途半端に覚えただけでは点数が取れないだけでなく、それが記述にも響いてきます。

 私は、もともと「会社法」が苦手でした。というより、初学の頃は、「民法」、「不登法」以外は全て苦手分野といってもよかったかもしれません。「民法」の場合は、日常生活における法ですから、理解しやすかったこと、「不登法」はもともと不動産関係の仕事に従事していたため、不動産関連知識についてある程度の素養があったことにより、比較的容易に理解することができました。

 これに対し「会社法」は、未知の分野であったため、理解が進まず、理解しても馴染みのない分野であるためにすぐに記憶が曖昧になる傾向がありました。例えば、『募集株式の発行』であれば、株主総会の特別決議で、原則、決議するのは覚えているのですが、何か頭の中で記憶がぼやけているような、そんな印象でした。また「民訴等」も、馴染みのない「手続法」であるため、同様に頭に入らず、苦労致しました。

 自分でもこのような状況では、決して合格できないのは分かっていましたので、当初よりいずれかの段階で、対策を施さなければならないと感じていました。


 私が行ったことは、下記のように「民法」、「不登法」以外の全ての科目は別紙に小項目を全て書き出すという方法です。論点となる項目を記載し、それを見たときに、論点について説明ができるようにに努めました。

実際の書出リスト4
実際の書出しリスト1
実際の書出しリスト2

 例えば、会社法で『株式会社の清算原因(3つ)』と記載した場合、それを見て「解散、設立無効の訴え、株式移転無効の訴え」と言えるようにします。
 民訴の『給付訴訟』と記載したとします。それを見て、「不作為を求める訴訟も給付訴訟に含まれる」と言えるようにします。
 民保で『供託できるもの』と記載した場合、「金銭・有価証券・当事者間の保証契約」と言えるようにします。
 この方法で私は各分野の全論点を記憶しました。当然忘れては覚えての繰り返しですが、中途半端な記憶ではなく一度しっかりと記憶した論点は、以後記憶の取り出しが非常に容易となります。

 この方法は、よく行われる基本的な暗記方法ですが、非常に時間がかかります。何故なら、司法書士試験は分野が広いので、一分野の論点となる全項目を別紙に書き出すだけで、1日以上かかることもあります。例えば、民訴民執民保の場合は、10枚程度(1枚あたり150項目とすると1500項目)必要でした。
 また、書き出したものを見て、全て言えるようになるには、相当な時間がかかりますし、勉強自体が全く面白みのない記憶作業ですから、ストレスも相当たまります。
 しかし、いくら辛くても、テキストに記載してある論点を全て完全に理解し暗記することは、合格に必要なことと私は考えます。


 司法書士試験の択一は5肢選択式です。そのため、そこまでしなくてもある程度解答できるのではないか、また完全暗記を試みる必要があるのか疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、100%完全に暗記したとしても、忘れるのが人間です。繰り返しテキストを読込んで記憶の継続を図り、論点を書き出しまでして忘れないようにしても、やはり記憶がおぼつかなくなります。
 本試験においては全く誰も知らないような論点も出題されますが、そうした肢の正誤を判断するためには、最低限テキスト上の論点は記憶していないと話になりません。

 また、現状択一30点以上を取ることが、一つの合否の分かれ目になっていますが、当初から30問程度正解ができる理解・記憶で本試験に挑むより、全問正解できる実力で試験を受ける方がリスクが少ないのは自明です。
 さらに、試験全体を通して考えれば、択一を解くスピードが午後の部では求められますから、記憶を明確にし、少しでも悩む時間を減らすことは合格のために非常に重要なこととも考えます。

 繰返しますが、自分が頼るべきテキストを決めたら、そのテキストを読込み、テキスト上の知識は完全暗記することです。中途半端にある種類のテキストを使用し、また次のテキストを使用する、こうしたやり方は記憶を曖昧にします。自分が選んだメインテキストを繰返し読み、理解し、記憶する、これが最も択一で点数が取れる方法と私は確信しています。

 但し、そのメインテキストが良質のテキストであって合格に必要な論点をカバーできるものであることが前提です。

 なお、合格された方の中には、テキストを読込まず、過去問中心で合格された方もいるかもしれません。決して、そうした勉強方法を否定するつもりはありません。より効率的に合格できればそれに越したことはありません。あくまでも、私の勉強法を記事にしただけですので、その点はご理解下さい。

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【司法書士試験】全般的な勉強方法” に対して14件のコメントがあります。

  1. より:

    こんにちは、初めまして。司法書士を目指して勉強しているMと申します。
    現在、点数がかんばしくなく今年はあきらめて27年度を目標に頑張っております。過去問と答練を中心に勉強してまいりましたが、このままでは一生合格できないと思い、他の勉強法を実践しようと思いこちらサイトを見つけました。試しに民訴他で論点の書き出しをしておるのですが、中々思うように進みません。
    @40様はどの程度まで論点の書き出しをされたのでしょうか?テキストに記載されているもの全てでしょうか?それとも過去問として出てきた所だけでしょうか?私はテキストのセンテンスごとに書き出したのですが、民訴だけで10時間で約450項目になりました。そのくらいのものでしょうか?
    ご参考にさせて頂きたく、論点の書き出しの基準や@40様が気を使ったところ、作業時間などを詳しく教えて頂けないでしょうか。
    突然のご連絡でご迷惑かとは存じますが、よろしくお願いいたします。

  2. @40 より:

    >Mさん(名前、ご本名かもしれないと思ったため、伏せさせていただきました)
    はじめまして
    返事が遅れて申し訳ありません。
    書き出しは、原則、「全て」です。
    民訴については、手続法ということもあり、記憶がおぼつかないことが多く、よっぽど間違えない自信がある論点以外は、全て別紙に書き出して記憶に努めました。
    民訴の書き出しは、1日程度はかかったと記憶しています。したがって、10時間かかったということですが、その位はかかってしかるべきと思います。
    論点の書き出しは、記事内でも述べましたが、民法・不登法以外の全ての科目で行いました。民法は、単純暗記よりも理解が必要であり、テキストで理解することに努めながら記憶した方がよいと判断したこと、不登法についても、論点を甲区や乙区の記載をイメージしながら、また、申請書の記載をイメージしながら記憶することが効果的だったことから、別紙に書き出すことはしませんでした。
    それ以外の手続法を主に書き出した訳ですが、書き出しした用紙で単純暗記をとにかく何度も繰返し(1ヶ月程度だったでしょうか)、その後はテキストに戻り、テキスト中心で記憶致しました。
    とにかく、中途半端な記憶で満足しないことです。LECでいえば、テキストに書いてある論点は、確実に網羅すべきと考えます。
    それは、気の遠くなるような作業かもしれませんが、それが合格への最短距離だと私は思っています。
    私が受講した実践力はお勧めですよ。論点が簡潔に記載されているので、全くの初心者にはきついかもしれませんが、中級者以上にとっては、記憶するに際し、有用なテキストとなり得ます。
    宜しくお願い致します。

  3. M より:

    こんにちは。お忙しいところご返信頂き、ありがとうございます。大変参考になりました。
    このサイトの記事の勉強法を実践してみて自分がいかに勉強不足だったかを実感している所です。@40様のおっしゃる通り単純暗記の作業は苦痛ですが、それでも頑張って続けてみようと思います。
    このサイトのお陰で自分なりの勉強法が見えてきました。ありがとうございます。

  4. @40 より:

    Mさん
    ご丁寧な返信ありがとうございます。
    司法書士試験は、難関と言われていますが、個人的には、やっただけ結果はついてくる試験だと思っています。
    基礎理解の段階さえ超えれば、あとはいかに記憶するかが勝負です。しっかりと覚えるか覚えないかが結果に大きく影響する試験です。
    1年間試験のための生活と言うのは、大変でしょうが、Mさんが、来年度合格されることを願っております。

  5. 北田 より:

    問題を解く場合、問題提起されたものをインプッとすれば、記憶が定着されるけれども、基本書の場合、問題の問われ方のわからない段階でどのような過程を経て試験に必要な記憶を選び出し、記憶するのですか?

  6. @40 より:

    >北田さん
    基本書というのは、テキストのことでしょうか。
    問題の問われ方が分からないということは、まだ初学の段階を指していると思われますが、その段階では、まずはテキストに書いてあることを理解することに努めるとよいかと思います。
    テキストに書いてあることが記憶できていないまでも、テキストを読むことで十分理解できるのであれば、あとはその論点を忘れないように記憶することです。
    問題の問われ方というのは、問題形式のことでしょうか。問題形式が分からなくても、テキストに書いてあることを理解でき、それぞれの論点の記憶が明確であれば、試験で点は取れます。
    また、試験に必要な記憶を選び出すというよりも、テキストに書いてある全ての論点を記憶することが必要です。

  7. ローリング より:

    いつも参考に拝読させていただいてます。
    アメブロや事務所サイトへのリンクが切れてしまっているようですのでよろしければ直してください。
    半年近くやってますが、1年半でこの成績は驚異的ですし励みになります

  8. @40 より:

    >ローリングさん
    コメントありがとうございます。
    アメブロは、すいません、なかなか更新できないこともあり退会しました。
    リンク切れになっていてすいません。
    HPは、更新期間切れになっているのは知っていますが、内容を変更しようと考えていることもあって、現状そのままにしておりました。
    このブログはそのままにしておくつもりです。
    司法書士試験は、やればやっただけ結果に反映される試験です。
    頑張ってくださいね。

  9. ローリング より:

    ありがとうございます。
    このサイトに書かれてあることは参考にさせていただいてますので助かります。
    独学で半年ほど朝晩中心にちょこちょこやってますが、記述がイマイチ漠然としており答練以前の問題なのが弱点です。
    まずは択一科目を頑張るしかないので、勉強方法等わからなくなったらまたブログを読み返します。

  10. @40 より:

    >ローリングさん
    ご丁寧に返信ありがとうございます。
    記述は、最初は本当に難しいですよね。
    でも、数をこなせば学力は向上しますよ。
    最初は簡単なものから始めるといいかもしれません。
    ではでは

  11. ユイ より:

    はじめまして、こんにちは。
    LECの司法書士試験15ヵ月コースを通信にて勉強しているものです。
    現在、民法&不動産登記法講義が終わり、会社法もそろそろ終盤にさしかかっています。
    会社法に入って、講義は理解できるものの、やはり記憶が薄れていくのが早いです。
    このままではいけないなと思い、@40さんがされた方法で記憶を強化しようと考えています。
    そこで質問させてくださいませ。
    @40さんは、別紙に小項目を全て書き出されていらっしゃいますが、これは、答えとなる部分は書かずに小項目のみを記載していらっしゃるのでしょうか。(私のPCでは、画像で確認できないため)
    小項目のみを抜き出していらっしゃる場合は、思い出すたびにその都度テキストに戻って、正答しているかどうか確認するということでしょうか。
    急な質問、大変申し訳ありません。
    お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

  12. @40 より:

    >ユイさん
    コメントありがとうございます。返信が遅れてしまい申し訳ありません。
    ブログ本文に記載したとおりですが、答えは書かずに、論点を記載し、その論点を見たときに、答えを答えられるようにしました。
    答えがおぼつかない時は、当然テキストに戻り確認しましたが、何度もやっているうちに、暗記できるようになりましたので、テキストに戻る必要はなくります。
    ただし、最終的には、あくまでもテキストを読み込むことが求められます。あくまでも、当初の段階での記憶の明確化のために、あのようなペーパーを作成しました。また、他教科の講義を受けながらすでに終えた教科のテキストを読む時間もなかったことも理由です。

  13. にんじん より:

    初めてコメントさせて頂きます。
    宜しくお願い致します。
    現在私予備校(伊藤塾)を使用して学習をしております。予備校ではとにかく立ち止まらずに
    先に進む事を推奨しているのですが、中々それが出来ずに悩んでおります・・・。
    民法一つ取っても後々の学習に必要不可欠な知識が大量にあるので、「ここで気を抜くと全てが崩壊する」という焦りからか細かい所まで
    理解して行こうとしてオーバーヒートして止まってしまうという感じですw
    「予備校に通ってんのに甘い事言ってんじゃない!」というお叱りを受けてしまいそうですが
    @40さんは初めて学習された時にその辺りは
    どの様に克服されていらっしゃいましたでしょうか?
    アドバイス頂けますと幸いです。
    何卒宜しくお願い致します。

  14. @40 より:

    >にんじんさん
    こんにちは。
    にんじんさんもご存じのように、司法書士試験の範囲は非常に膨大です。おそらく予備校講師のいう「立ち止まらずに前へ」という指導は、まずは年内については、全科目の基礎に目を通し、理解することに重点をおき、じっくり暗記する作業は年明けから、という意味もあると推測します。
    民法が終わり会社法などに移ると、民法の知識が消えていくように感じることと思います。私もそうでした。しかし、これは受験生誰しも同じ感覚を持つことであって、ある意味割り切るしかありません。
    まずは、年内は試験科目の基礎を学ぶことで問題ありません。もしにんじんさんが初学者の方であれば尚更です。
    ただし、覚えた知識を忘れることは構いませんが、理解は妥協しないことです。理解することをいい加減にしてしまうと、年明けから記憶作業、つまり暗記をすることの効率が下がります。
    もし、にんじんさんが民法の理解をするうえで、分からないことが多いのであれば、例えオーバーヒート気味であっても、理解を深めることは悪いとは思いません。ただ、記憶をすることにこだわらなければ、立ち止まる状況にはならないと思います。テキストには論点が書いてあり、その解説も記載されているはずです。確かに、なんとなく腑に落ちないと感じるものもあるかもしれませんが、それが基礎的な論点であれば、オーバーヒート気味と感じても絶対に抑えるべきですが、少し応用的な論点であれば、あまり気にせずに前進むことでよいと思いますよ。

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