LEC実践力PowerUP講座

LEC実践力PowerUP講座の概要

 当ブログにおいて、何度か触れましたが、私はLECの実践力講座を受講していました。予備校を受講した理由は、良質のテキストを手にいれるためでしたが、こちらの記事で説明をした通り、答練など予期しないメリットがあったのも事実です。
 そもそも、数ある予備校の中からLECを選んだ理由ですが、実は明確な理由があった訳ではありません。強いてあげれば、10年以上前のことですが、知人の一人が旧司法試験をLECの講座に通いながら、合格したことを覚えていたこと、上位に位置する司法試験講座を持っていること、最も早く司法書士講座を開設し多くのノウハウを持っているであろうと推察できたことなどが理由です。
 この記事では、「実践力POWERUP講座Web通信」について、その特徴を述べていきます。今後予備校の講座を受講される方の参考になればと思います。なお、私が受講した2013年用の実践力講座についての記事ですので、その後講座内容が変更になる場合もあります)
 実践力は、中上級者用の講座です。初学者でもついていけないことはありませんが、基礎学力が一定以上ある受験生用にまとめられているため、基本論点すぎるものについては、簡略化されて記載されている場合もあります。しかし、論点となるべき知識については、後述する論点を除き、ほぼテキスト上で網羅されています。そのため、十分に合格のために頼るべきテキストとなり得ます。
 また、簡略化されて記載されている論点があるということは、初学者には厳しいのかもしれませんが、中上級者にとっては余計な基礎的すぎる論点にとらわれ過ぎることなく、テキストの読込みが可能となる側面もあります。特に、何度も読込みをする際に、多くの論点の把握が容易となります。あまりに細かすぎると、読込みに時間がかかり過ぎるからです。
 例えば民法の債権編の「連帯債務」においては、請求・更改・相殺・免除・混同・時効の6つの絶対効のうち、債務負担部分により変化が生じる相殺・免除・時効については、図解にて詳しく説明がされていますが、残り3つについては説明はほぼされていません。初学者にとっては、非常に分かりにくい記載となりかねませんが、中上級者にとっては、請求は説明はいらないと思いますし、更改・混同についてはその性質上(更改は旧債権債務関係が一旦消滅し、新たな債権債務関係が成立する。混同は弁済とみなされる)債務は消滅することは当然ですから絶対効であれことさえ知っていれば済みます。むしろ分かりにくい負担部分がある絶対効のみを詳しく説明されていた方が有難い場合もあります。
 また、そもそも司法書士試験の民法の主役は「物権」ですから、出題頻度が少ないためこのような記載にあえてしている可能性もあります。
 誤解をしないで頂きたいのは、基礎的な論点であっても、それが重要な論点であればしっかりと記載がされています。上記の「連帯債務」であれば、6つの絶対効事由はもちろん記載があります。但し、説明について限定的であるということです。

 また、この講座にはメインテキストに加え、海野講師が作成したサブテキストが付いてきます。このテキストは海野講師は講義で言っていましたが、初学者用の講座のテキストを基礎としているようです。
 メインテキストで十分説明がされきれていない論点や、海野講師が説明を付け加えるべきと判断した論点などが掲載されています。従って、上記「連帯債務」の論点についても、負担部分がない3つの絶対効についてはサブテキスト上に説明があります。
 もともと講座自体が、中上級者用に作られたものなので、全くの初級者であればちょっと厳しいかもしれませんが、2年目以降の受験生の方であればメインテキスト上で理解ができなくても、サブテキスト上で説明が補完されるので安心です。
 この講座のテキストを完全暗記し(もちろん第一義的に必要なのは自分の努力です)、答練をやり復習をかかさずに行い、LECの肢別過去問集などで論点を補完すれば、択一30点以上は得点できる実力を養成可能です。記述も基準点を越えるために質量ともに十分な問題が用意されています。
 下記はLECから送られてくるテキスト・答練など一式ですが、非常に膨大な量です。受講した方は分かるでしょうが、ほぼ毎週数冊の教材がヤマト便で届きます。これら本講座のテキストおよび答練により、本試験論点の95%以上はカバーできていると思います。
 (バインダーは私がファイルしたものです。教材にはついてきません。バラバラになってしまうためバインダーに収めました)

LECテキスト1
LECテキスト2

 通信の場合、講義は、Webで3名の講師のビデオを好きなように見ることができます。何度でも見ることができます。倍速も可能です。また、途中から見ることももちろん可能です。
 また講義音声ファイルのみをダウンロードすることも可能です。ウォークマン等で聴くことができます。ファイル形式はWMAだったと思います(ちょっとうろ覚えです)
 講師は、それぞれ特徴があります。鈴木講師は司法書士の勉強は、法解釈を学ぶ学問であることをモットーに、法律的な考え方を全面に出してくるのが特徴です。こうしたアプローチは、本試験において問題を解く上でも重要なことと考えますし、合格後には実務においてさらに必要となる能力と考えます。
 海野講師は、分かりやすい講義が特徴です。前述の自作サブテキスト等で鈴木講師よりは細かく説明をしてくれます。また、講義冒頭にて、通常10分程度のちょっとした受験の心構え的な話をいつもしてくれます。
 赤松講師は、テキスト記載の事例をAランクからCランクに分けて重要性を示すのが特徴的です。
 私は、鈴木講師の授業を基本とし、時間があれば海野講師の講義を聴くようにしていました。講義は比較的ゆっくりとしているため、1.3~1.5倍速程度で聴くことが通常でした。
 なお、両方の講師の講義を聴いていると思ったのですが、鈴木講師、海野講師の講義では、同じような講義にならないように配慮されている印象がありました。例えば、鈴木講師の講義ではあまり触れられなかった部分は、海野講師の講義で詳しく説明され、またその反対もありえるということです。
 基本的なスケジュールは、年内から年明け1月にかけて講義。1月後半より、個別科目の答練、3月位から午前科目、午後科目毎の答練へと移行していきます。
 つまり、徐々に記憶すべき範囲を広げていくことで、試験本番時に記憶をピークに持っていくような配慮がなされています。
 答練の問題についても、1月後半からの個別科目の答練の問題は比較的易しく、午前科目、午後科目答練になると若干問題のレベルが上がります。また直近の模試では、相当に高度な問題が出題されます。
 記述答練についても同様に本番が近付くにつれ問題レベルが上がっていきますが、当初より本試験に比べると難しい問題が多く、非常に有効な記述の練習となります。
 参考:記述試験の勉強法
 年明けから始まる答練は全国順位が表示されます。それにより現在の自分の実力が分かるようになっています。答練で順位がよくても何の意味もありませんが、孤独な受験生生活の中、他の受験生と比較できることによって、モチベーションを高めることが出来ると思います。
 最後に、この講座は非常によくできた講座なのですが、短所もないわけではありません。1年スパンの講座であり、講義半年、答練半年がその基本構成です。そのため半年間ですべての講義を終了させるために、比較的講義回数が少なく構成されています。例えば憲法・刑法は各3回で終わりです。3回計9時間の講義では、論点を網羅することは不可能です。
 私はもともと受講の目的がテキストにあったため、講義が不十分でも問題ありませんでしたが、しっかりとした講義をまず聞きたい方がいる場合は、若干不満に思われるかもしれません。中級者以上を対象としている講座であること、半年で講義を終了する構成になっていることから、やむを得ないのかもしれません。
 次に、テキスト上の論点が完全ではない分野があります。これはちょっと個人的にいただけない点でした。例えば、不登法における「工場抵当」「工場財団」、会社法(商法)における「商法の細かい論点」、前者はそもそも記載がなく、後者は記載が不十分です。両者とも本試験において十分出題可能性がある論点ですから、このくらいは省かずに記載して欲しかったと思います。
 なお、答練において両方の論点ともに出題されますから、全く触れずに試験を迎えるわけではないことを付け加えておきます。
 全体として講座としての完成度は非常に高いです。私がこの講座以外にやった勉強は、LECの「択一過去問肢集」と「書式ベーシック(記述)」のみです。あとは全く手をだしていません。つまり、十分本試験合格のために頼ることができる講座と分かっていただけると思います。
参考:使用した教材
追記
 LECの講義そのものについてではありませんが、ちょっと一点追記させてください。予備校の講義とは、当り前ですが、あくまでも合格のための講義であって、勉強するための講義ではありません。
 何が言いたいかというと、予備校の講義(ウェブ講義含)を受けると、その瞬間は勉強した気になりますが、重要なのはその理解した記憶を本試験で出せるかどうかです。講義を受けることにより「勉強した感」が残るため、自己満足に陥りがちですが、講義を受けることは本試験対策において必要不可欠なことではありません。要はテキストに記載の事項を完全に理解し記憶することが重要であって、あくまでも講義はその手助けをしてくれるだけです。極論を言ってしまうと、講義受けなくてもテキストのみで理解できるのであれば、講義を受ける必要はありません。
 講義はあくまでも記憶の開始における取り掛かりに過ぎず、講義を聴いて予習をし、次の講義のために復習をするだけでは記憶は完成せず、テキストの読込みが必要であることを考えます。つまり、予備校は合格のために必要な勉強の一部分を担うに過ぎず、全体を担うものではありません。結局は講義以外において合格のための努力が必要になるということです。予備校の講義は、その努力の手助けをしてくれるものであり、いくら優れた講義やテキストであっても、ただ漠然と予備校のカリキュラムに沿っていれば合格するものではありません。これはLECに限らず、伊藤塾であろうがTACであろうが同様だと思います。

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LEC実践力PowerUP講座” に対して6件のコメントがあります。

  1. 初学者 より:

    はじめまして、ブログ全て読ませていただきました。
    ぜひアドバイいただきたいです。
    私は今年の4月から、lecの15ヶ月講座を受講しているんですが、とても15ヶ月ではこのブログに書いてある勉強をこなせそうにありません。
    私は現在、講義で触れた論点を論理も含めて理解暗記すること、そして、合格ゾーン演習で、講義の理解度の確認と、触れられていない論点について、テキストで覚えるということをやっています。
    なので、ブレークスルーテキストを読み込んでいるのは、講義で触れた部分+講義で触れられていない過去問を解くのに必要な部分のみです。
    これに加えて、来年4月からはじまる模試で、上記の勉強で触れることのできなかった論点をテキストを使って潰して、試験に望むことになるのですがこれだと不十分でしょうか?

  2. 初学者 より:

    すみません。一つ書き忘れましたが、過去問を解く時には、なるべく解説は読まないようにしています。
    講義で習った理論で解ける場合は、それで押し通して、どうしても無理な時も、見当をつけて六法なりテキストから答えをだすようにしています。
    長くなりましたが、アドバイスいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

  3. @40 より:

    こんにちは。
    4月から15か月コースというのは、「2014年合格目標:新15ヵ月合格コース<春生>インプット+アウトプット一括」のコースでしょうか?
    まず、私はこのコースを受講したことがないので、このURL(http://online.lec-jp.com/defaultMall/sitemap/CSfLastPackGoodsPage_004.jsp?GOODS_NO=271471&IMG_ROOT=/defaultMall)のカリキュラムを見て判断するしかなく、また「合格ゾーン」も使用したことがないため内容を知らないことをご承知おき下さい。
    15か月コースは、LECが初学者が最低限勉強すべき時間を考慮して開講しているコースだと考えます。
    まず、今のようにメイン予備校テキスト、サブ合格ゾーンの2本立てで勉強するのは、私自身はお勧めできません。
    ちなみに、ブレイクスルーテキストというのは、予備校のテキストのことですよね?これでしょうか?
    URL(http://www.lec-jp.com/shoshi/reason/images/text/sample01.gif)
    表見代理の2ページほどを見ただけなので、なんとも判断できませんが、私が受講した「実践力講座」のテキストのまとめ方から判断すると、少なくとも試験に必要な論点は網羅されているテキストであると思われます。
    また初学者の方用の講座であれば、講義においては詳しく説明がおそらくあると思うので、この予備校のテキストで理解することに努めた方がいいように思えます。
    どうしても理解ができない場合にのみ、テキスト以外の参考書等で補完する形であれば問題はないかと思いますが、コメントから2本立てのように感じたため、ちょっと申し上げさせて頂きました。
    この予備校のテキストに書いてることを理解し論点を完全暗記することができれば合格するには十分だと思われます。ただ、初学者の方用のテキストなので、若干記載が細かすぎるようにも思えました。したがって、論点がどこなのかはしっかりと講義等で確認をしておくべきと思います。
    例えば、さきほどのURL先のテキストであれば、左側の制度趣旨は理解しておくことは必要ですが、暗記するまでは必要ありません。論点の前提知識に過ぎないからです。
    なお、「初学者」さんが今やられている勉強方法が不十分か十分かは判断できません。何故なら、もし「初学者」さんが今の勉強方法で論点を理解し、その記憶を本試験において継続できるのであれば、何の問題もないからです。私のように、テキストを何度も読込む必要はないと思います。
    ただ、もし「初学者」さんが、今の勉強方法を不安に思う部分があり、本試験において今の勉強を続けていても合格できないという気持ちがあるのであれば、そのままでは合格は難しいと思います。何かしらの対策を打たれた方がいいと思います。
    私が、アドバイスできるのは、ブログに記載したような私の経験に基づいた方法しかありませんが、確かに「初学者」さんのような初学者の方であれば、勉強を始めたばかりでこのような完全暗記などが出来るのか不安に思われることでしょう。
    4月から勉強を開始されたのであれば、まだ勉強時間は半年でしょうから、15か月でこのブログに書いてあることをこなせそうにないと思われるのは当然だと思います。まだ暗記うんぬんよりも各分野の内容を理解しておられる段階だと思いますので、本当にこれを全部暗記できるのかと不安に思われるのはよく分かります。
    私がこのブログで書いたことは、実は大して珍しい事ではないと思っています。特に2年目以降の専業で勉強されている方は必死な方が多く、相当な勉強を経由して試験に臨みます。試験は、固定点ではなく、受験者の平均点から算出された基準点がもとになりますが、つまり試験に合格するためにはこれらの受験生に勝たなくてはいけない部分もあります。
    ブログ上で何度も繰返しテキストを読込み完全暗記すべきと記載しました。記事自体が、中上級者向けに書いていた部分もあるのですが、もし「初学者」さんのように初学者の方を不安にしてしまったなら申し訳ないと思っています。ただ、試験で合格するために、そうした行為は私は必要だと思っています。
    ただし、理解し暗記すべきと記載したように、暗記するにしてもまずは理解することが前提です。そのため、4月から勉強を始めたのであれば、まずは各分野の論点を理解することに努め、例えば、民法など既に講義が終わった部分については、時間に余裕があればテキストを読込むことをされてはいかがでしょうか。
    「初学者」さんが、勉強に日々どのくらい費やすことができるかは分かりませんが、カリキュラムを見る限り、講義とは別に答練もあるようですし、それに加え終わった講義のテキストを読込むというのは、大変でしょう。まだ初学の段階であれば、テキストを読込むのも時間がかかります。この時期からずっと一日長時間の勉強時間を本試験まで継続するというのは、相当きつい事と思います。
    人間やれることには限りがありますから、優先順位でいうと、今の段階であればまずは各分野の論点を理解することが第一だと思います。
    その上で、いずれかの段階で、やはりしっかりとテキストの論点を暗記するまで把握しなければいけない時期を経由する必要があると考えます。
    過去問についてですが、>>無理な時も、見当をつけて<<とありますが、これだとテキストの論点を理解しない前に問題をやっているような印象を受けました。
    こちらもその方法で「初学者」さんが試験に出題される全論点を理解できるのであればそれはそれで問題ないと思いますが、私は経験上、過去問で全論点を理解するのは難しいと思っています。
    問題の前にまずはテキストを読込んだ方がいいと思います。
    ご参考になったか分かりませんが宜しくお願い致します。

  4. @40 より:

    合格ゾーンというのは、過去問なんですね
    すいません、失礼いたしました。
    >>まず、今のようにメイン予備校テキスト、サブ合格ゾーンの2本立てで勉強するのは、私自身はお勧めできません。<<
    訂正させてください
    であるならば、テキストの論点を補完し、また問題形式を確認するためであればよいのではないでしょうか
    あくまでも論点はメインテキストを読込むことが良いと私は思いますが、もし合格ゾーンで論点をしっかりと理解することができるのであれば、そうした勉強法でもよいと思います。ちょっと合格ゾーンを読んだことがないので、何ともいえない部分もあるのですが。

  5. ニシオ より:

    先日質問させて頂いた者ですが、過去に同様の質問に回答なされていたようで、テキストだけでなく、ブログの読み込みも足りないようで反省しております。
    過去の回答と@40様のブログの内容をもう一度読み込み、自分に合わせて勉強していこうと思います。
    ありがとうございました。

  6. @40 より:

    >ニシオさん
    こんばんは
    ご丁寧にご返信ありがとうございます。
    勉強大変だと思いますが、頑張ってください!

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