【司法書士試験】択一試験の勉強方法
論点ごとの要件を確実に抑える必要があります
択一試験の勉強法は、テキストを何度も読込んで、しっかりと論点を理解し暗記すること、そしてその上で問題を解くことが効果的です。何か効率的な方法があれば良いのですが、テキストの反復読込みが回り道の様で、実は最も択一の得点を上げる近道です。
全般的な勉強方法のページに掲載した画像のように、記憶が曖昧な項目は全て書き出して覚えるなどの方法も有効かと思います。いずれにしろ、過去問のみに頼った勉強法では、相当な強運があれば別として、合格することは難しいと考えます。
過去問は、論点についての基礎理解をしっかりとした上で、取り掛かるべきです。司法書士試験においての過去問の意義は以下の3つです。決して、過去問は論点を理解するメイン教材とはなりえません。そもそも過去問では限られた論点のみしか取り上げられていませんので、試験に出る論点を全て把握するには、過去問では足りないことも理由の一つです。
過去問の意義
- 理解度の確認
- 論点がどのように問題化されるかを確認し、問題形式に慣れておくこと
- テキスト上に記載のない論点を記憶すること
択一問題を解くためには、論点を把握しておく必要がありますが、論点には単純暗記的なものと、構成要件的な論点があります。
単純暗記的な論点とは、「成年被後見人が、後見人の同意無しで行った日用品の購入は有効か」という問題があった場合、答えは「〇」となりますが、このように単一の知識があれば、問題を深く検討することなくして正誤を導き出せる論点のことです。
この例の場合は、「できる」か「できない」かを知っていればよいだけです。こうした単純暗記的な論点は、過去問を解くことでも習得が可能です。この成年被後見人の論点はどの問題集にも確実に記載がある有名論点です。
では次に、「Aを買主、Bを売主としてAB間で土地の売買契約が成立したが、その売買契約はBの詐欺によるものであった。Aはその売買契約がBの詐欺によるものであると知った後、Cにさらに転売した。AはAB間の売買契約をBの詐欺を理由に取り消せるか」という問題があったとします。
この問題も法定追認の有名論点ですので、どの問題集にも確実に記載があります。答えはもちろん「×」となりますが、合格レベルにある受験生であれば、このような問題を見たときに、法定追認の構成要件(3個)および追認事由の全て(6個)が頭に浮かぶか、あるいはそこまでに至らなくても、少なくとも法定追認にはいくつかの要件および事由があったことを思い出します。
そして、法定追認の構成要件に該当するかを判断し又は記憶が定かでなかっとしても、現状思い出せる範囲で判断しようと努め、正誤を導きだします。決して過去問で見たことあるから「×」などとは結論づけません。
何故なら、司法書士試験の問題は、一見すると「×」だが実は「〇」が正解というような問題も多いため、過去問で見たことあるなどの理由で「×」と結論づけるのはリスクが大きすぎるからです。
過去問に頼った受験生は、①見たことある問題で答えは「×」だった②「売買契約において、詐欺を知った後にその目的物をさらに転売した者は詐欺取消しできない」と暗記していた等の判断で正誤を導き出す場合がありえます。法定追認の論点が過去問通りの形式で出題されれば、こうした解法でも問題はありませんが、過去問になかった法定追認事由が生じていた場合に、正誤を導き出せるでしょうか。
例えば、「法定代理人が息子である未成年者が詐欺により意思表示をしたことを知らないで更改契約をした」と問題文中に記されていた場合にはどうでしょうか。しっかりとテキストの基本知識を記憶していれば、「法定代理人」=法定追認の構成要件である取消権者によってなされている、「知らないで」=法定追認は取消し原因の状況が消滅後にされる必要があるが、法定代理人等にはこの制限はない、「更改」=法定追認事由にあたる、結果、当該行為は法定追認に該当する可能性が高いことが分かります。
さらに択一の解き方に踏込むと、合格者は前述の通り、問題内容が法定追認であればその要件に合致するかを判断していくわけですが、もう一つ付け加えると、司法書士試験においては、問題の意図を確実に把握することが、点数を取る上で絶対的に必要となってきます。
司法書士試験に限らず、どの試験においても、問題には出題者の意図があります。問題を読みながら、出題者の意図を確実に理解しながら解いているかそうでないかは、高度な試験においてほど重要になってきます。
各肢の問題の意図、つまり出題者が何を聞いているかを判断することが非常に重要です。こう聞くと当り前と思われるかもしれませんが、択一で点が伸びない受験生の多くは、この当り前のことが出来ていない場合が多いと思われます。
司法書士の試験は難解です。各肢も正誤に迷う肢が多いと言われています。何故正誤に迷うのか、それは論点についての理解が不十分だからに他なりません。先ほどの法定追認の問題であれば、「出題者が聞きたいのは法定追認の構成要件とその事由を理解しているか」であることを問題を読んだ瞬間に把握しなければいけません。そして把握をしたら、自分の記憶探って答えを出すのです。そうすれば、司法書士の択一問題は、記憶さえ確実であれば、あとは要件にあてはめるだけですから、実は難しくありません。
そもそも問題表題において、何についての問題かは示されますから、問題を読んだ瞬間に論点が頭に浮かばない様では、実力不足といえるかもしれません。
だからこそ、テキストを読込んで論点をしっかりと理解し、法定追認のような論点であれば構成要件と事由を完全暗記する位の姿勢が必要となってくるのです。
出題者が何を聞いているかを必ず判断すること(文字にするとなんだか難しそうに思えますが、要は当たり前のことであって、それをあえて意識して問題を解くことが必要であると言っているだけです)を常時心掛ける事です。そしてそれが、単純暗記的なものであれば、割切って暗記で済ましても構いませんが、構成要件的な論点であれば確実にその要件を抑えることが必要です。
また、試験本番においてのみ関係することですが、5肢全体を通しての意図を把握することが必要になる場合もあります。
問題には、1番~5番目までの全ての肢が基本知識を理解していれば正誤を導き出せる問題もあれば、1番2番3番は比較的容易に正誤を判定できるが、4番5番は判定に高度な知識を必要とされる、又はそもそも受験レベルの知識を超えていて判断不可といった問題も存在します。
こうした場合、出題者の意図は、「1番2番3番の正誤により答えを導き出しなさい」になります。むしろ、司法書士試験が難しいと言われる所以でもありますが、5肢全てが判断可能である場合の方が少ないため、例えば1番目の肢が正誤の判断が困難な肢であった場合、自信を持ってその肢の検討をやめ、2番目の肢の検討に入ることも必要です。
正直なところ、いきなり一番目にそのような肢があると、精神的にもダメージを受けますが、自分が分からないのであれば他の人に分かるはずがない位の強い気持ちを持つことが必要になる場合も生じます。そうしたある意味で良い自信を持つためには、何度も言いますが、テキストの論点を完全に理解し暗記することが不可欠です。
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