【司法書士試験】本試験の時間配分

午後の試験では、記述試験のために1時間程度で択一を終わらせることが必要です。

 何故、午前の択一の試験時間が2時間であって、午後の択一&記述の試験時間が3時間なのか?午後の択一は2時間必要、記述は1時間必要だからではありません。
 まず記述から説明すると、記述に消費すべき時間は「最低1時間半」です。これは絶対です。
 1時間半取れなかったら合格は難しい。何故か。不登法でも商登法でも答案に書くだけという「記入時間」がそれぞれ30分弱は必要となるからです。30分弱という時間には検討時間は入っていません。あくまでも「書く」という作業の時間です。そうすると必然的に最低でも検討に商登法、不登法で合わせて30分はかかるでしょうから、1時間半は必要となってくるはずです。
 しかし、私は更に択一を1時間で終わらせるべきと考えます。これにより、記述に2時間の時間を使用することができます。
 先ほど記載に1時間、検討に30分だと述べたのは、あくまでも最低限の例であって、実際のところ検討に30分は少ないと思います。特に不登法の場合は、記載前に検討の時間が必要であり、記載しながら検討することはできないことを考えると、やはり2時間程度はみておく必要があります。
 なお、不登法で記載前に検討の時間が必要になる理由ですが、不登法においては試される能力の一つに「物権変動を発生した順に正確に申請できるか」があります。不登法の問題は、しっかりと細部まで検討しないと、その順番が分からないことも少なくありません。また「便宜」省略できる申請も存在します。そのため、まずは一度最後まで問題用紙を読み検討する必要があるのです。
 平成25年度の本試験において、私は不登法の記述に1時間弱ほど時間を消費しました。25年度の不登法記述は、論点としては非常に単純でしたが、添付書類に遺言書や売買契約書等もあり、またそこに遺言執行者、名変登記がからんでくる検討に時間を要する問題でした。おそらくこの問題を30分で解けた受験生はいないと思います。平均的な時間として45分から1時間程度はかかったのではないでしょうか。仮に不登法に1時間を要し、記述全体で1時間半の時間しかなかった場合、商登法に30分程度しか残っていないことになります。
 では、そもそも午後択一を1時間でできるのかという問題ですが、これは可能です。というより、きつい言い方で申し訳ありませんが、午後の択一を1時間~1時間半程度で解答できないようでは、合格レベルにあるとは言えません。おそらく、合格者のほとんどは、択一を1時間~1時間半内で解いているのではないでしょうか。
 午後の択一試験科目は、不登法、商登法、民訴等、供託法、司法書士法です。推論などは若干検討に時間を要しますが、それ以外はテキストの基本知識を理解していれば即座に答えを導き出せる問題が多いはずです。単純暗記的な論点であれ、構成要件を検討して答えを導き出す論点であれ、要は知識があるかないかです。ちょっとしたひっかけ的な問題もありますが、手続法がメインですから、短時間で解答が出来得るのです。出題者も、普通に考えれば、時間内に終えることができない構成はしません。実力がある受験生ならば1時間強で択一を解けるレベルの問題構成をしています。

 では、午前の択一は何故2時間なのか。民法、憲法、会社法、刑法が午前科目です。会社法は単純暗記的な側面もありますが、それ以外は考えさせる問題ばかりです。刑法などはまさにそうですが、犯罪構成要件に該当するかしないかをしっかり検討しないと正誤は出せません。憲法は推論もあり、かつ最近は判例の結論ではなく、細かい趣旨を問うてくる問題が多く、ちょっとした文言が判例と違っているなどで、その検討に時間を取らせる場合もあります。そして民法も当然、刑法と同様に構成要件に該当するかしないかに検討を要する問題が多いのです。そう考えると合格レベルにあれば若干時間に余裕が生じるでしょうが、全体で2時間は妥当な時間と思われます。
 午後の部に戻ります。2時間弱の記述時間を取るためには、逆算すると、択一各問につき、2分程度で終わらせる必要があります。ここで午前と午後の択一の問題を解くにあたっての差が出てきます。基本、午前の部は肢を全部検討しますが、午後の部の肢は必要最小限度で検討すべきです。これは人によってやり方がことなるでしょうが、私の場合をご説明します。
 まず、どうしたら記述で2時間の時間を取れるかを検討しましたが、問題毎に全ての肢を検討すると、どんなに頑張っても1時間半近くかかってしまうことが分かりました。2時間残すためには検討すべき肢を限って解答することが必要でした。
 私がとった方法は決して珍しい方法ではありませんが、例えば「〇」を選ぶ場合、最初の〇を選んだ時点で、下の選択肢の組合せ肢を検討し、さらに念のためもう一つの組合せ肢を検討する(例えばアイ、アオで、アが〇と分かったらイとオを検討する)方法でした。他の肢は記述が終わって余裕がある場合、また自信が無い場合に限り念のため選択するのみに留めました。
 この方法により本試験直前期の模試において、記述に2時間弱の時間を残すことに成功しました。本試験においても1時間で択一を終了しましたが、午後択一のおそらく8割程度しか検討していません(なお、10分程度時間が余ったので、その時間で若干の見直しはしました)
 もちろん、この方法を取るには上記事例であれば「ア」が絶対確実に〇であると見抜ける力が必要となります。以前のブログで再三述べましたが、そうした力はテキストを完全暗記することにより養うことが可能となります。
(参考記事:全般的な勉強方法および択一試験の勉強方法
 当初私が受験を決意した当時、初めて午後の部の試験を解いたとき、「こんなの3時間で無理!」と感じたのを記憶しています。おそらく、初学者は誰しもそのような感覚を持つのではないでしょうか。
 しかし、今思うのは、司法書士試験というのは、全体で3時間あれば十分に解答できる試験であり、時間内に全てを高いレベルで解答する者のみが合格できる構成を取った非常にレベルの高い良試験だということです。
 また同時に、努力が報われる試験でもあります。当初、難しく感じ、また時間内に終えることができなくても、しっかりと勉強を重ねれば、最初は不可能と思った時間内に解答をし終えることも、次第に可能となってくるはずです。
 最後に、午前の択一ですが、これは前述の通り2時間で若干余裕があるはずです。よって、問題毎の全肢について時間をかけて検討しても、十分時間内に終えることができるはずです。当然問題内の肢を選択的に解答するよりも、全肢を解答した方が正誤を誤らないのは自明ですから、午後の部のように選択的に検討する必要は全くありません。

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【司法書士試験】本試験の時間配分” に対して5件のコメントがあります。

  1. アラフォー元受験生 より:

    @40さん、こんばんは
    僕も専業で2年目で何とか合格し、通信でLEC実践力PowerUP講座を受講し、講師は海野先生でした。おまけにアラフォーです。
    点数は合計234点で@40さんには全くかないませんが(笑)
    で、ひとつ質問させて頂きたいのですが、行政書士の試験を受けるつもりなんですが、なにせ記述の出来があまりよくなかったものですから試験後から全くやる気が起こらず全く勉強していません。今も口述試験のために少しだけ勉強をしだしたところなんです。
    行政書士の勉強も口述試験後に始めようかと思っているんですが、効率のよい合格方法を伝授していただきたいのです。勉強できる時間は1日5時間×20日で100時間を考えているんですが・・・(民法、会社法は自信がありますが、憲法はあまり得意ではありません)
    かなり甘えた考えだとは思っていますが、どうかご教授お願いします!

  2. @40 より:

    アラフォー元受験生さん、こんにちは
    合格おめでとうございます!
    点数は時の運だと思います。
    来月の試験を受験されるんですよね。
    民法・会社法については、実践力の慣れ親しんだテキストを読まれれば良いと思います。ただし、細かい論点までは読む必要はありません(発展論点など)
    憲法は、行政法のテキストを使用された方がいいと思います。行政書士試験の場合、「統治機構」分野からの問題も多いため、行政書士試験専門のテキストの方が効率的に記載されているからです。なお、行政書士試験の「人権」分野は、司法書士レベルほどの問題は出題されませんが、判例の結論だけではなく、何故そうなったのかなどの判旨については知っておく必要があります。例えば、「指紋押捺拒否事件」であれば、結論は「違憲ではない」が、「外国人には指紋押捺を拒否する自由を有する」という判旨の部分のことです。こうした論点は行政書士試験のテキストに記載がありますのでそれを覚えれば良いと思います。
    また、民法の記述(40字程度で2問)は、勉強する必要がありません。実践力のテキストを読んでいれば解けます。ちなみに、去年は、「検索の抗弁権」と「遺留分減殺」についてでした。
    民法・会社法・憲法については、アラフォー元受験生さんであれば、問題ないと思います。問題は、行政法と一般知識ですが、こちらはしっかり勉強する必要があります。
    特に行政法は、馴染みのない「手続法」なので理解に時間を要する可能性がありますから、最優先で勉強した方がいいと思います。手続きの流れを勉強するようなものなので、全く勉強に面白みを感じることができないため、最初はきついかもしれません。
    一般知識は単純暗記です。
    私が、使用したテキストは下記の通りです。
    LEC
    2013年版出る順行政書士合格基本書 (出る順行政書士シリーズ)
    ある程度の大きさの書店であれば置いてあると思います。
    行政法は、このテキストを読込みました。
    一般知識については、若干記載に不足があるため、下記のテキストを併用しました。
    ダイエックス出版
    行政書士基礎テキスト 一般知識編〈2013年度版〉
    このテキストは非常に分かりやすく一般知識分野について記載されているのでお勧めです。
    以前のブログにも記載しましたが、一般知識の勉強は範囲を広げ過ぎないことが必要です。基本書とこのダイエックスのテキストをやれば十分だと思います。
    ただし、本試験では、ここに記載のない論点も出題される可能性がありますが、一般知識を網羅するのは不可能です。
    ちなみに、一般知識には、国語の問題が3問出題されます(文章理解)
    もしアラフォー元受験生さんが、国語力に自信があるのであれば、これは取れるはずです。勉強する必要はありません。本をよく読むような方であれば大丈夫です。
    もし国語力に自信がない場合ですが、国語力は一朝一夕に向上させることができるものではないので、いずれにしても文章理解の勉強は不要ですが、その場合は、他の問題で点数を獲得するしかありません。一般知識の中で比較的取りやすいのは情報通信分野かと思います。
    ちなみに、私の場合は、文章理解で点数を稼いだことにより、足切りを免れました。もし文章理解が取れてなかった場合、不合格でした。
    テキストを基礎理解を深めたら、過去問集をやればよいと思います。ブログ内で、司法書士試験はテキストを読込み、完全暗記すべきと記載していますが、行政書士試験においては、ここまでの読込みは不要です。ある程度理解したら、過去問をやればよいと思います。
    既に知識をお持ちの民法、会社法については過去問を解く必要はないと思いますが、問題の形式だけは見ておいた方が無難です。司法書士試験とは問題の文言等が違うので、初見だと戸惑う可能性があります。
    ご参考になったか分かりませんがよろしくお願い致します。
    試験頑張ってください!

  3. @40 より:

    アラフォー元受験生さん
    「行政書士の勉強も口述試験後に始めようかと思っているんですが」
    失礼しました。
    来年受験という意味ですよね。であれば、今の時期は基本書を読み流す程度でいいのではないでしょうか。
    暇があれば読む程度で、来年8月位から徐々にペースを上げる感じでよいと思います。

  4. アラフォー元受験生 より:

    @40さん、こんにちは
    きわめて具体的に勉強方法を書いていただき感激しております!!!
    行政書士の受験は来年じゃなく今年受けるつもりです。(勉強時間は3週間程しかないですが・・・)
    さっそくアマゾンでテキストを買い物しました。
    僕は国語の問題があまり得意ではなく、司法書士の試験でも推論問題が大の苦手でした。幸い今年は推論問題の数が少なく、その点でもラッキーでした。
    文章理解の3問で点数が取れればかなり違ってきそうですね。

  5. @40 より:

    すいません今年受験されるんですね。
    3週間ほどでも、時間をかければ不可能ではないと思いますので、頑張ってください!
    私は、行政法はもちろんですが、試験においての肝は一般知識だと思っています。
    ブログに書いた通り、どこまでやれば良いのか分からない部分があるため、本番まで勉強をしたので大丈夫という自信が持てないことが理由です。
    そういえば、LECから口述試験対策のテキストを貰いました。もし口述対策をされてるんでしたら、LECに問い合わせてみるといいかもしれませんよ!

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