開業後に必要となる費用

合格~開業後に用意しておく金額とは

 昨日の記事で合格後の研修日程および費用を記載致しましたが、司法書士試験受験を志してから、合格し、開業するに際し必要となる費用について考えてみたいと思います(合格後から具体的にかかった費用は別ブログで計上しています)
 司法書士試験の場合、私の様に、30代、40代、50代で受験する方も珍しくはなく、既に社会人であろうそれらの方が、受験をする場合に同じような計算をする上で参考になればと考えています。

 なお、記事は自分で生計を立ててる方(以下「自活」)されている方を前提としています。社会人であっても、親元等で生活している方にはあてはまりません。また、合格後に就職するのではなく、開業することを考えている方を対象としています。
 司法書士試験は、サラリーマンとして働きながら合格することも無理ではありませんが、勉強専業で受験する方も多く、その場合、その間は無収入となってしまいます。単身であっても、結婚し所帯を持っている方であっても、独立し自活されている方は、親元で受験されている方に比べて圧倒的に大きな金額が必要となります。したがって、専業受験の場合は、開業までに必要となる額について事前に予想しておくことが当然考えられます。
 もちろん、個々人によって、毎月必要となる額は異なるため、あくまでも目安になりますが、私と同じようなスパンで勉強期間を経由し、そして開業することを考えた場合に、一体いくら必要なのかについて考えてみたいと思います。

働きながら勉強(独学)
【生活費】
 給与所得があるため考慮しない
【テキスト代】
 25,000円(1冊2,500円×10冊と仮定)
 どのシリーズであれ3万円もあれば全巻揃うと思われます
【問題集】
 25,000円(1冊2,500円×10冊と仮定)
 どのシリーズであれ3万円もあれば全巻揃うと思われます
【その他書籍】
 プラスαとして他に書籍を使用した場合ですが、2万円もあれば十分と思います

 仮に上記のように独学で受験に挑んだ場合は、必要なテキスト・問題集代としての目安は8~10万円程度になると考えます。
受験勉強専業期間(1年とする)
【予備校代】
 予備校の講座にもよりますが、私のような中級講座の場合、30万円が目安となると思われます。初学者用の長期講座に申し込めば40万強は必要となります(どちらも答練込のフルパックの場合)
 私は、早割(早い時期に申し込むと割引+特典がある)で申し込んだので25万円程度で受講することができました。
【テキスト】
 不要
【問題集】
 予備校を受講したとしても、市販問題集が必要となる場合があります。私の場合は、LEC肢別問題集を使用しましたが、実をいうと、予備校の早割特典として、無料で貰ったものです(民、会、不、商のみ)。もともと市販問題集は使う予定はなかったのですが、今受験を終えて思うのは、予備校の答練のみでは若干問題数として不足する面もあるため、このような市販問題集を使用したことは有意義であったと考えます。
 仮に、全巻同様の問題集を揃えたとすると、3,000円×11冊計算で、33,000円が必要となります。
 また記述の問題集を予備校とは別に使用することも考えられますが、いずれにしても、予備校以外で市販問題集として使用したとしても、5万円もあれば十分かと思います。
 このように、予備校に通った場合は、予備校代30万円~50万円に加え、5万円程度が市販書代として必要となる計算になります。
【生活費】
今回の記事は、実はここからが本題です。
 受験専業で収入がない場合に、1年間の生活費を考慮しておくのは当然です。衣食住が基本となるでしょうが、目安として下記の額が必要となるはずです。
 固定費(家賃又はローン):10万円
 目安です。これより低い場合もあるでしょうし、高い場合もあるでしょう。ローンの場合は、賞与月に数十万円さらに必要となります。
 光熱費:3万円(携帯含む)
 家族構成によって当然異なります
 食費:5万円
 社会保険:2~3万円
 前年所得により、国民健康保険は変化します
 雑費:5万円
 衣料、各種保険、遊興費等の諸々必要となる額です
 上記を合算すると月額25万円となります。ただし、単身者である場合や、これ以下に抑えることが可能な場合もあり、これ以上の金額が必要になる方がいることも予想されます。例えば、食費、雑費を抑えたり、婚姻中で共働きであれば消費額は減少する場合もあるでしょうし、反対に、子供がいる場合の養育費等で増加することもあるでしょう。固定費が仮に5万円程度で済むのであれば、大幅に減額可能となります。便宜的に、家族がいる場合の最低限の額を20万円とすると、1年間で240万円が消費されることになります。
 また、これに加えて、前年課税所得によって算出される住民税や突発的に必要となる費用を考慮すると、合格までの1年間で250万~300万円程度みておくことが一般的かもしれません。
合格後~登録まで
 東京会のように合格後に司法書士会に即入会が可能な地域もあれば、私の県のように新人研修や書士会の研修を完了しない限り入会ができない司法書士会もあります。司法書士法でまさに勉強する範囲ですが、登録は書士会の入会が要件となっているため、こうした場合、合格から10ヶ月程度は司法書士として業務を開始することは叶わない場合が生じ得ます。つまり、1ヶ月の生活費を20万円とした場合に、さらに200万円が消費されることになります。
 また、研修にも費用が必要です。昨日のブログに記載した通り、研修費だけで27万円は絶対的に必要となります。さらに、移動費および宿泊費を考慮すると、住所により差は生じますが、私のように地方で、かつ、住居が県庁所在地ではない場合、研修に係る費用全体として40~50万円程度の費用が必要となる場合があります。
 研修が登録要件となってる場合
 20万円(毎月の生活費)×10ヶ月+50万円(突発的に必要となる費用)+50万円(研修にかかる費用)=300万円

登録後(開業後)
 司法書士のみとして開業するのであれば、自宅開業が可能です(賃貸アパートでも可)。行政書士、宅建等を兼業する場合は、自宅事務所要件が厳しくなるため、あらたに事務所となる場所を確保する必要が生じ得ます。両資格の場合、出入口が家人と兼用とされると登録できません。司法書士の場合、そのような制限はないようです。
 事務所を賃貸する場合、事業用の事務所でなくとも、いわゆる賃貸人(大家)の了解があれば、ワンルームマンション等を事務所にすることも可能ですが、当然毎月の家賃が発生することになります

 司法書士単体で、既存の住居において開業したとすると、1年スパンで下記の費用がかかることが想定されます
【生活費】
毎月20万×12か月+60万円(突発的に必要となる費用)=300万円
【旅費交通費】
毎月5万円×12か月=60万円
地域によって移動手段が公共機関か自家用車となるなど異なりますが、5万程度は必要になると私は想定しています。
【通信費】
毎月2万円×12か月=24万円
【司法書士会会費】
毎月3万円×12か月=36万円
地域により異なります。また初年度減額がある会もあります。
【雑費(交際費・消耗品など)】
毎月5万円×12か月=60万円
 なお、開業すると確定申告が必要となりますが、法人化するのでない限り、個人事業であれば税理士に依頼することは全く不要です。市販の弥生会計などのソフトを使用すれば自分で申告書できます(青色であっても同様です)。従って、税理士費用は計上しません。
 ここまで計算すると、業務開始後の1年間で消費される額は、480万円となります。生活費を除くと180万円となりますが、司法書士という仕事が他の仕事に比べて初期投資や日々の経費が抑えられることを勘案しても、やはり200万円程度は私は必要になると想定しています。事務所を借りた場合は、さらに固定費が相当額プラスされるでしょう。
 私は、実は最悪な結果として、開業後2年間全く仕事がないことも想定していますが、その場合は生活費を合わせて960万円が消費されることになります。また、開業時にかかる費用、すなわち書士会入会費、有償の申請ソフトを購入する場合、業者にHP作成を依頼する場合などを考慮すると、開業にあたってはやはり1,100万円程度の費用をみておくことが無難と考えます。
 なお、税金については、所得がなければ課税はされませんから、ここでは考慮しません。
 この金額に上記の開業までに必要となる費用を合算すると以下の通りです。
 40万円(勉強にかかる費用)+300万円(勉強専業中の生活費1年間)+250万円(合格後研修期間中10か月間にかかる生活費)+50万円(研修費用)+600万円(開業後2年間の生活費)+500万円(開業後2年間の事務所運営費)
 司法書士試験を志してから、1年の受験専業期間を経て、開業後2年間に必要となる金額(開業後2年間無収入とした場合)
 1,740万円

 ただし、単身者の場合や、生活費の中で大半を占める固定費がそれほどかからないのであれば、必要な金額は相当減額されると思われます。
 上記金額は、個々人によって必要とする生活費や開業後の事務所運営費は異なることから、あくまでも目安に過ぎませんが、開業を目指すのであれば、受験を決断し勉強専業となった以後から、開業し2年間程度は収入が無い状態も想定すると、次の年数分の生活費は確保しておいた方が良いと思います。もちろん、開業後すぐに仕事を取れる自信のある方には当てはまりません。
 受験専業期間から開業後のために確保しておくべき生活費
 4年分

 ちなみに、開業後すぐに司法書士として生計が立てられたとすると、必要な金額および生活費は下記程度になると思われます。
 司法書士受験を志してから、1年の受験専業期間を経て、開業までに必要となる金額(開業費および開業後は考慮せず)
 640万円

 生活費によって増減します。
 研修が登録要件となっていない場合は、合格から登録までの生活費が減少するので、さらに必要な金額は減少します。
400万円程度と考えられます。
 こちらも、受験勉強中の生活費を抑えられれば、さらに減額も可能でしょう。

 難解といわれる司法書士試験に私はなんとか約1年の専業期間のみで合格することができました。年齢的には受験生の中でも上の方に位置し、子供もいるため、受験期間中は相当必死であり、また追い込まれてもおりました。性格的には楽観的な面もあるのですが、いわゆる背水の陣で受験に挑んだことは事実です。勉強中は毎月ドンドンお金が減りますから、非常に焦ります。
 おそらく、今勉強されている方の中には、私と同じような境遇の方も多くいらっしゃるのではないかと思っています。家族がおり、また子供もいるような方だけでなく、単身であっても独立し自活して勉強されている方にとっては、受験に際し非常に不利が多いのは事実です。時間的にも、金銭的にも、親元等で受験をされている方に比べると制約が圧倒的に大きいからです。
 専業期間が長くなれば長くなるほど、消費し出ていくお金は増えます。また、合格後、開業してもすぐに軌道にのるとは限りませんから、その間の生活費も必要となります。まさに人生を賭けているような状況であるといえますが、だからこそ短期間で結果を出す必要があります。
 受験専業の生活を決断したということは、何らかの勝算があってそうした決断をされることが多いと思われます。つまり、必要な勉強時間を経れば合格することができるという自信があるからこそ、そのような決断ができるのですが、であれば、なおさら来年の本試験において悔いのないような勉強をされるべきです。
 今人生を賭けて受験生活をしている方が、来年の試験に合格されることを、同じような境遇にあったからこそ、私は願っています。
 これから、司法書士試験を目指される方にとって、上記の金額を高いと思われるか、または低いと思われるかは分かりませんが、いずれにしろ受験専業を決断するのであれば、少なくとも相当期間の生活費は確保しておいた方がいいように思います
 もちろん、このような計算をされる際には、生活費も考慮されることと思いますが、合格後から登録までに期間が必要な場合もあり、また研修費なども必要となってきます。そのため、決断の前に、合格→即開業という流れが可能かどうかについても一度考慮されることをお勧め致します。

開業後に必要となる費用” に対して2件のコメントがあります。

  1. ショシ・ヨーク より:

    こんにちは!
    すごい緻密な計算ですね。
    @40さんの記事はいつもながら感服いたします!
    生きていくためのお金と合格するためのお金と開業するためのお金と成功するためのお金と・・・・・・。
    出費ばかりですね・・・。
    特に私の場合、合格するための出費が嵩みましたので、黒字になるのはまだまだ先になりそうです。
    因みに私は、机と椅子とパソコンとプリンタと電話機だけで自宅開業です。
    初期投資0円です。
    受験期の書籍浪費が原因です(笑)
    お互い黒字を夢見て頑張りましょう!

  2. @40 より:

    >ショシ・ヨークさん
    こんにちは!
    ショシ・ヨークさんのブログもよく拝見させて頂いております。
    具体的に、もう行動されているようで、きっと既に受験中から色々なプランを検討されていたんだろうなと、私も感服しております。
    私も、開業は出来るだけ最低限の事務用品のみでするつもりです。
    特に私の場合は、補助者経験もなく、見えないことが多いので、尚更無謀な先行投資ができない怖さがあります。
    既に、依頼を受けたとの記事を拝見いたしました。凄い行動力ですね。
    私も見習わなければ!

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