【司法書士試験】答練で何点とるべきか

答練と本試験の関連性

 もうすぐ12月に入り、あと1ヶ月で今年も終わりですね。予備校によってスケジュールは異なると思いますが、来年1月からは答練が始まる方も多いのではないでしょうか。
 「答練」という言葉は、もしかすると、独学で勉強されている方はご存じなかもしれないため説明をすると、要はちょっとした模試です。こちらも予備校によって異なりますが、本試験と同様に35問の択一試験問題をほぼ同様の1時間半~2時間で解き、その点数がWeb等で公開され、全国順位が分かるようになっています。
 記述試験については、択一試験と一緒に行われる場合もあるでしょうし、別途単独の答練として実施される場合もあるかと思います。
 私が受講したLEC実践力講座の場合、1月中旬より「実力養成編」として個別科目の答練が4月まで行われ、5月から「ファイナル編」として午前科目、午後科目毎に分けた択一答練が実施されます。
 「実力養成編」では、範囲が民法、不登法等の1科目に限られ、事前に範囲が示されます。「ファイナル編」では、1週毎に午前科目35問、午後科目35問の試験が行われます。記述答練は、双方の答練において、1週間~2週間に1度のペースで択一試験答練の後半部分に、本試験と同様の形式で、問題が添付されています。また、別途記述単体の答練も、その間に執り行われます。
 以下においては、私が受講したLECの答練をベースとした記事となりますが、その点はご了解下さい。
 では、答練において、目指すべき点数は何点なのか。これは、もちろん満点です。確かに、答練で高得点を叩き出し続けても、本試験で点数が低ければ合格できませんが、原則、答練で点数が取れないのに、本試験で点数が取れるとも思いません。
 勉強とは、積み重ねである以上、継続した勉強のみが合格への近道と考えます。したがって、日々の勉強の結果を試すことが出来る答練の結果と本試験の結果は、決して関連性がないとはいえません。
 満点を取るべきと申し上げましたが、実は私は答練で満点は取ったことはなかったように記憶しています。ただ、常に満点を取ることを目指して答練を受けていました。私の答練および模試の成績ですが、基本A評価で推移し、一度C評価がついたと記憶しています。LECの場合、全体の上位15%以上の場合にA評価がつきます。正直なところ、LEC実践力講座に限っていえば、年明けから始まる答練において、満点を取るのは至難の業です。なぜなら、テキストに記載のない論点が幾つか出題されるからです。
 LECの実践力講座は、中級者用講座ということで、テキストが簡略化されて記載されている場合があると、以前申し上げました。おそらく、テキストに記載のない論点を答練において補完し、講座全体を通して、結果として本試験に必要な論点をマスターする構成になっているものと推察致します。
 しかし、仮に満点を取ることが実質的に難しい答練であっても、満点は目指すべきです。というより、満点を目指すために、事前に示される試験範囲をしっかりと復習すべきです。
 年内中は、講義を聴き、おそらく理解することを中心とした勉強を行ってきた方が多いと思います。これに対し、年明けの答練からは、いよいよテキスト記載の論点を記憶することを徐々に努めていかなければなりませんが、答練で高得点を獲得するというちょっとした目標が、記憶作業のモチベーションを高めてくれるため、これを上手く利用して論点の記憶を図ることは、とても効率的であるといえます。
 私も、年内中は時間的余裕があれば、テキストの読込みは行っておりましたが、まだしっかりと記憶するまでには至っておりませんでした。まず、年明けの答練「実力養成編」において、科目範囲毎の記憶作業を行い、5月以降の「ファイナル編」においては、午前科目、午後科目毎に記憶し、そして5月後半からの全国模試段階では、いよいよ全範囲について完全暗記をして試験に挑みました。
 こうした答練内容の推移に応じて記憶していくことは、他の予備校でも同様に可能と思われますが、効果的な勉強方法を取る上で非常に有効です。以前、元々1冊で本試験に対応できるテキストを得るためだけのために予備校を受講したが、答練という予期しない利点もあったと申し上げた理由の2つ目はこの点です(1つ目は、記述答練において、本試験と同様の形式で、本試験のレベル以上の応用問題を解くことができる点)
 もちろん、実際の記憶作業は、時間もかかり簡単なものではありません。しかし、個別科目の答練時点で、論点を確実に記憶すれば、その後別科目の答練に移行し、仮に記憶した論点を忘れてしまったとしても、一度しっかりと記憶した論点は以後取り出しやすくなるため、年内に比べると早いスピードでテキストの読込みが出来るようになっていきます。そうして、徐々にテキストの読込み速度を上げていき、本試験直近2週間前程度からは、テキスト全冊を何度か繰返し読み、論点の確認をすることが、合格のために最も必要なことの一つであると私は確信しています。
 昨年、LECの海野講師の講義を聴いていると、海野講師のこのような発言がありました。
 「答練の時点から高得点で推移し合格に至る者と、答練の時点では高得点であったが、本試験前から調子を落とし結果的に合格に至らなかった人がいる」

 こう聞くと、必ずしも答練の結果イコール本試験合格とも限らないような印象を受けますが、受験を経由した者の立場からの意見として言わせて頂くと、私自身の考えは少し異なります。
 答練で高得点で、何故本試験で合格に至らなかったのか。考えられる理由は、本試験に記憶のピークを持っていかなかったことしかありえません。おそらく、答練で高得点を出した時点では、合格レベルの記憶力を持っていたはずですが、その後継続的に記憶の補完作業、すなわちテキストの読込みを行っていなかったため、覚えていたはずの論点の記憶が不明瞭な状態のままで本試験を受けたのではないかと推測致します。
 海野講師の発言は、むしろ、本試験にピークを持っていくことが必要であり、事前に頑張り過ぎると反動で成績が落ちる的な内容だったかもしれません。確かに精神面に限っていえば、そのような側面もないとはいえません。例えば、6月の時点で完璧に仕上げすぎると、本試験のある7月が重要であると分かってはいても、やはり人間ですから、どうしても安心して勉強のペースが落ちてしまったり、また「やり切った感」から、以降どのような勉強を継続するか悩むこともありえるため、それが本試験に影響することも考えられなくはありません。
 ただ、私はそのような精神面については、正直アドバイスできません。予備校の講師であれば、ある意味試験のプロですから、精神面のアドバイスも、これまでの多くの受験生のデータから、傾向的なことについて助言もできると思いますが、私の拠り所は、直近の本試験を経験した者としての自身の経験しかありません。そのため、前述のような意見しか記載できませんが、ご容赦願います。
 ところで、「答練(択一)で高い点数を取ることができなければ、本試験で合格できないか」と問われた場合ですが、「そうともいえるし、そうともいえない」と私は答えます。冒頭で、「原則、答練で点数が取れないのに、本試験で点数が取れるとも思いません」という一文で、「原則」と留保語を付け加えたのはこの理由によります。基本的には、勉強が積み重ねである以上、答練の結果と本試験の結果に関連性は全くないはずがないと考えています。
 答練(択一)で点数が取れない理由は、2つ考えられます。1つは、そもそも理解度が足りていない場合、もう1つは理解度は十分足りているが、ただ事前に範囲について勉強することなく答練を受けた場合です。
 よく、答練で点数は低かったが、合格したという方がいます。このような方の場合、通常、基本的な理解は十分にあったが(例えば、覚えていなくても、テキストの論点を見た時に、それを思い出すことができる状態)、ただ単に論点をしっかりと覚えておらず、記憶が足りなかっただけであると考えます。もちろん、年明けの答練開始時点で、理解度が低く、答練を重ねる毎に徐々に実力を向上させていくことも考えられなくはありませんが、その場合であれば5月の午前科目・午後科目答練の時期には、高い点数を獲得できるはずです。また、7月まで6ヶ月という短い期間において、年明けに理解度が足りない場合、理解しただけで終わりではなく、記憶作業も経由しなければならないことも考えると、そこから合格レベルの学力に達するのは、実は相当難しいことであると思います。
 私が、ここで言いたいのは、答練で点数を取れなくても合格できたという方の体験談を読んで、安易に安心すべきではないということです。理解度は高いが単に記憶が不完全で点数が取れなかった方と、そもそも論点の理解度が低く基本的な学力が不足している方を、仮に答練で同じ点数であっても同列に扱うことはできません。また、私のような合格者のブログにおいて、答練の点数も高かったと書くことは自慢的な印象も与えかねないため、なかなか書きにくいのも実情でしょうから、傾向的に答練の結果は本試験に直結しないという記事になりがちかと思います。
 仮に、答練で高い点数が取れなかった場合、もし理解度が十分あるのであれば、そこまで心配することはありませんが、理解度が低く、答え・解説を見た時に初めて見る論点があまりに多いような場合は、答練で点数が取れなくても合格した方がいると安心せずに、そこから相当の努力が必要になることを直視しなければなりません。特に司法書士試験は複数回受験が当たり前の試験ですから、年明け時点で既に全範囲の勉強を一通り終えて、記憶は完全ではないけれども、理解していない論点はない、という状態の受験生は多数います。むしろ、その状態からいかに本試験に明確な記憶を持って臨めるかが勝負ともいえる試験です。したがって、年明けの答練の結果が悪く、その時点で焦ることのないように、年内中に基礎力を磨き、論点の理解を進めておかなければなりません。
 いずれにしても、年明けの答練は記憶の向上を図る絶好の機会です。上手くこれを利用し、徐々に記憶の範囲を広げ、より明確な記憶を持って本試験に臨むことで、合格の可能性を上げることが出来ると私は思います。初めの頃のブログで、本試験2週間前からは、LEC実践力講座のテキストを3日間で全冊(4,000頁ほど)読むことを繰り返したという記事を書きましたが、答練を上手く使って継続した記憶作業を行えば、直近時にこのような速読は誰でも可能となるはずです。そして、繰返しになりますが、直近時に全範囲について再度論点の確認をすることこそが、合格のために重要なことと考えます。