開業時に仕事を受任できるか

名刺交換

開業時の営業は必要でしょうか

 今日においては、司法書士の仕事は、以前からの登記に加え、成年後見、財産管理、裁判書類作成、制限付きではありますが訴訟代理人等の多岐に渡っています。

 ここでは、今後開業を考えている方のために、私がいる地方都市においては、どのような仕事があり、また、どこから仕事の依頼を受けているのかにつき、一般論ではありますが、私の開業の際の状況に絡めて記していきたいと思います。なお、地方都市といっても、私がいる市は人口数十万を超えていますので、例えば人口が10万以下の市やあるいは東京、大阪、名古屋、福岡といった大都市では、また違う傾向があるかと思います。

 実をいうと、私はもともと、今住んでいる地域の出身ではありません。首都圏近郊で育ち、こちらには20代後半に移転してきました。地方の場合、成人した後も、やはり、子供時代からのつながりが強く、また、首都圏近郊の方だと想像できないかもしれませんが、「〇〇高校出身」といった高校ブランド力も強いことから、こうした地縁社会の傾向が強い場所において、そのようなバックグランドがない人間が開業するというのは、結構大変でした(というか、今も大変です)

 反面、地方都市において開業する利点もあります。例えば大都市においては、みずほ、三菱UFJといった都銀の支店が多く、以前、東京の司法書士に聞いたところ、なかなか都銀からは仕事を回してもらえないとのことでした。有難いことに、地方都市においてはそのような状況はありません。おそらくどの地方都市であっても、都銀は主要駅前に支店があるのみで、信用金庫や地銀が多いためです。それら金融機関で仕事を貰えるかは、その時のタイミングや状況もよるでしょうが、少なくとも開業の挨拶を兼ねて訪問すれば、門前払いされることはなく、名刺交換くらいはできるかと思います。

 実際、私の最初の仕事は、地元の信用金庫からの抵当権抹消登記でした。誰でも開業の挨拶に伺えば、抹消登記の1個位は頂けるでしょう。その後は、地元の地銀等からも一時期仕事を頂くことができましたが、一般論として、やはり大都市よりも地方都市の方が、新規で金融機関から仕事を貰いやすい状況はあるかと思います。

 なお、金融機関から仕事を貰う際に、おそらく、「クレジットカードを作って欲しい」、「定期預金をして欲しい」又は「投資信託を契約して欲しい」などの要望をされることがあるでしょう。開業当初は、これが結構頻繁にあります。こうした要望に応えるかは本人次第ですが、関係性を深めていくことでまた仕事を回してくれるかもしれません。もちろん、必ずしも仕事の依頼が続くとは限りませんが、開業時には、まず金融機関に挨拶に行くというのは基本だと思います。

 なお、金融機関の場合、約3年毎に異動が発生し、仕事を回してくれていた担当者が異動になると、バッタリ仕事の依頼が来なくなることもありますので、あまり依存するのは禁物です。

 また、不動産会社等も、開業する際に挨拶に行くとよいかもしれません。私のいる地域では、いわゆる売買の決済において、司法書士を決定するのは、ほぼ不動産会社やハウスメーカーとなっています。以前は、金融機関が主導で司法書士を決めていたらしいのですが、おそらく、不動産会社等が、顧客に金融機関を紹介する流れがあり、仕事のヒエラルキーがあるとすれば、頂点にはもちろん買主等の顧客がおり、その次に不動産会社等がいるような状況です。顧客のほとんどは、そもそも司法書士自体を知らないことも多く、その結果、不動産会社等が主導で手続きを進め、司法書士を決定することが多くなっています。

 ちなみに、私も開業時に、多くの不動産会社に挨拶に行きましたが、結果はほぼ全滅でした。1社使ってくれた会社があった程度です。名刺を100枚位は配ったでしょうか。正直なところ、既に抱えている司法書士がいるわけですから、今更それを変更する必要性はないわけで、当然といえば当然の結果だったと思います。しかし、動かなければ、何も生まないことを考えると、開業した際に、こうした挨拶回りをすることはありだと思います。

 簡単ではない不動産会社からの仕事の獲得ですが、それでも、おそらく首都圏の不動産価格が高いエリアにおいては、大手の不動産会社が寡占している状況を想定すると、まだ地方の方が営業しやすい側面はあるかと思います。地方においては、もちろん大手不動産会社もありますが、地縁社会の傾向が依然強く、むしろ大手より地元の不動産会社の方が力を持っているからです。

 次に商業登記についてですが、その依頼元の多くは税理士事務所が多いのが実情です。ほとんどの会社は、税務申告を税理士に頼んでいるため、そのような状況が生まれます。したがって、開業時には税理士事務所に挨拶行かれることも検討されるべきでしょう。もちろん、上記の不動産会社等と同じで、税理事務所毎に既に関係がある司法書士がいるでしょうから、そこから仕事を貰うのは簡単ではありません。

 私の場合も、商業登記については、ほぼ税理士絡みです。一部、不動産登記で知り合った会社から、直接依頼が来ることもありますが、多くはありません。

 成年後見業務をされたいのであれば、リーガルサポートに加入することを、開業時には検討されることでしょう。私も以前は加入していましたが、途中で退会しました。理由は諸々検討した結果です。コメント等で理由を尋ねられても、お答えはできませんのでご了承下さい。

 今は知りませんが、私が加入していた当時は、リーガルサポートに入ると、会員が後見人等に就任立候補できる案件が、毎月ファックスで送られてきました。私のいる地域では、当時、1か月に2,3件だった気がします。この件数ですが、地域によって差があるようで、私の知り合いの他地域の司法書士に聞いたところでは、多くの案件があり、実際にリーガルサポート経由で何件もの成年後見人等に就任しているとの話でした。一方、それほど紹介がない地域もあるようです。

 なお、リーガルサポートに入会せずとも、成年後見人等に就任することはもちろん可能です。実際、私が受けた案件は、不動産登記で知り合った方からのご紹介でした。こうした直接受任の際、リーガルサポートに入会している場合は、仮に直接受任した案件であっても、リーガルサポートへの報告義務があります。

現状の私の状況

 現状、私の仕事の多くは不動産登記に関係する案件が多いのが実情です。前述のとおり、色々苦労し、仕事を貰うのは簡単ではありませんが、それでも結局は不動産登記中心となっています。何故なら、幾つかの司法書士事務所のHP記載の報酬表を見て頂くと分かると思いますが、不動産登記の報酬額は、商業登記等の報酬額より高額であることが多く、仕事を得るのは大変であっても、経営的な観点でいうと、不動産登記をこなすことで事務所経営が安定する側面は確かに存在するからです。

 特に私の場合は、徒手空拳で始めましたので、尚更、まずは経営を安定させる必要性が急務であり、そのような方向性を取らざるを得ませんでした。事務所経費及び自身の生活費を合算し、月あたりの目安となる必要売上額を計算し、まずはその売上額を目標としました。この不動産登記業務については、また機会があればブログに掲載しますが、まずはこうした業務から開始し、徐々に関係性を広げていったというのが現状です。

 現状の不動産登記業務に係る依頼元は不動産会社及びハウスメーカです。なお、その不動産会社等の仕事の全てを回してもらえるわけではありません。また税理士事務所から相続などの依頼をされることもあります。金融機関は、前述のとおり、担当者替えなどもあり、一部たまに依頼がある限りで、多くはありません。顧客からの直接依頼は、今の事務所場所で7年経ちますので、認知度が高まったのか、徐々に増えてきているという状況です。

 いずれにしろ、私の状況は、売上から判断すると、普通というのが適切か、普通より少し下くらいかもしれません。一応は、ご飯は食べていける状況ではあります。ただ、私の場合、有難いことに、依頼元の不動産会社や金融機関の紹介により業務を受任した顧客から、数年後などに再度直接連絡を頂き、他の業務の依頼や相談をされることが多々あります。「数年前に〇〇をお願いした者ですが、また〇〇をお願いしたいのですが」などのご連絡を頂けるのは、嬉しい限りです。こうしたことも、結局は、地道に関係性を広げることが結びついていると考えています。

 私の周りでは、私以上に不動産登記を中心に業務をされている事務所もあります。不動産登記業務における最もメインの業務は、売買決済における所有権移転登記となります。こうした事務所の場合は、おそらく売買決済だけで、コンスタントに月に10件程度はあるのかと想定します。もっとかもしれません。私の場合、最高で5,6件の月はありましたが、反対に0件の月もありました。こうした月による変動が大きいのであれば、なかなか不動産登記のみで、経営していくことは困難でしょう。

 また、最近では、イオン銀行のように、抵当権設定登記の依頼に際し、首都圏の決まった司法書士事務所が窓口となり、それがさらに地方の決まった司法書士事務所を復代理人として選任し、結果、所有権移転登記と抵当権設定登記を別々の事務所が申請するという方式も見られるようになっています。こうした手続きは、他のネット系銀行でも見られます。また、一部地銀等でも、抵当権などの申請依頼窓口を一括化しようとする動きもあると聞いています。地方の不動産会社等では、さすがにそうしたことは考えにくい側面はありますが、いずれにしろ、将来的には不動産登記の受任の経緯も変わっていくのかもしれません。

 また、リーガルサポートに入会し、成年後見人業務だけを行っている事務所もあります。その場合には、1人の被後見人等を担当するのではなく、10人程度の被後見人等を受け持っているのが通常なようです。しかし、正直なところ、10人もの被後見人等を受け持つと、後見業務だけで手一杯になり、なかなか他の業務に対応する余裕もなくなるかもしれません。

 裁判関係書類作成や訴訟代理人等の中心に業務をされている事務所もあります。実は、こうした事務所の方が経営的には安定する気がします。何故なら、司法書士事務所の多くは、やはり不動産登記業務に傾く傾向があるのは否めなく、不動産登記業務においては、司法書士は仕事を取り合うような状況が生じています。一方、裁判書類作成業務や訴訟代理人業務を中心に行っている事務所は、それに比べれば多くなく、一方でそのようなニーズは常に存在しており、不動産会社や金融機関への依存傾向も高くないため、その動向に左右されることもなく、結果、経営的に安定する気がいたします。

 最後に商業登記ですが、商業登記のみという事務所は聞いたことがありません。大規模なM&Aや組織再編絡みはともかく、一般的な役員変更等の業務においては、報酬額はそれほど多くなく、さらに10年任期が主流であることなどを鑑みると、よほど何社も顧客先がない限りは、商業登記メインで経営していくことは難しいような気が致します。

 ところで、司法書士の中には、開業前から既に何かしらのコネクションがあり、開業後、特段の営業行為をしていない方も確かに存在します。また親の繋がりで開業から順調に業務をされている方もいます。しかし、私のように知り合い等が誰もいないのであれば、まずは自分を知ってもらうことから始めるより他にありません。リーガルサポートに入会しても、地域包括支援センターなどで関係性を広げる努力が必要となる場合もあります。結局のところ、全て人との繋がりから依頼が来ることには変わりありません。したがって、今後開業される方で、その開業場所において自身のバックグランドがないのであれば、やはり、何かしらの営業活動は必要でしょう。

 営業活動をしていくことにより、そこから派生した人間関係が生じ、それが次の仕事に結びついていきます。それは不動産登記かもしれませんし、商業登記かもしれません。こうして獲得した仕事を一つ一つ完結していくことが基本となります。

 営業活動をしても、一朝一夕に結果がでることはありませんが、一般企業においても、これは同じです。まずは、あまり焦らずに、自身の経営計画を検討し、無理のない範囲で開業されることが重要です。

 あまり、焦って結果を出そうとしても、相手方がいる以上、自分の思い通りにはなりません。また、司法書士事務所の経営は簡単ではなく、会社と異なり上司、部下、同僚といった仲間がいるわけではありませんので、相談する相手もいない孤独な経営になりがちです。したがって、実は精神的な負担は少なくありません。そのため、焦れば焦るほどストレスを感じ、それを解消できず、むしろ悪循環に陥ることもあります。

 しかし、開業した以上、前に進むしかなく、仮にその1歩の歩みが遅くても、それでも進む以外の道はありません。おそらくほとんどの司法書士は、このような状況を経験し、また乗り越えながら、仕事の依頼を増やしていると思われます。

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