先払い?後払い?司法書士の報酬受領時期

請求書

 報酬をいつ依頼者に請求し、いつ受領するかについて、悩む場合があります。

 地域によっても、色々な慣行があるのかもしれませんが、一般的な話として、例えば、裁判系であれば、着手金を受領し、残額は後払いなどが多いのかもしれません。商業登記においても、依頼者が法人であることから、末〆、末払いによる後払い振込みなども考えられます。

 一方、不動産登記においてはどうでしょうか。

 例えば、不動産売買決済においては売買代金決済時に報酬等(報酬&登録免許税)を受領します。売買決済手続のメインは、あくまでも、不動産売買代金そのものの支払及び受領ですが、固定資産税の清算や不動産仲介業者への支払い、分筆などがあれば土地家屋調査士への支払いなどの一切の付随する支払いを完了する側面もあり、司法書士の報酬等も、その場で、現金又は振込みにより支払われることが通常です。

 借り換え等の担保権の設定の報酬は、設定実行日に振込みにより支払われます。こうした金融機関主導の手続きにおいては、事前に金融機関が顧客に出金振込伝票を書いてもらい、司法書士の報酬等は、当日、それに従って司法書士指定口座に入金されるのです。

 なお、借り換え手続においては、抹消後に入金される場合もあります。私の地域では、住宅ローンの借り換えの場合、一度後順位で抵当権を設定し、後日、先順位の抵当権を抹消するのが通例です。つまり、一旦、抵当権が2つ登記されている状況が生じ、抹消までタイムラグが生じるわけですが、この抹消が完了した後に報酬等が入金されることもあります。この辺りの手続きは、地域により差があるかと思われます。

 また、新築建物の登記が絡む場合は、時に、住宅会社をとおして請求する場合があります。住宅建築においては、各種の必要経費が発生するため、住宅会社は、事前に顧客から100万円程度を預り金として徴収し、各種必要経費の支払いや建物表題登記、保存登記費用もそこから支出されます。この場合も、司法書士の報酬等は、登記完了後の後払いとなります。

 

 登記以外であれば、実費として立て替える額は大した金額ではありません。さらに、登記であっても、商業登記の場合は、登録免許税が高額になることはそれほど多くありません。不動産登記においても、金融機関や住宅会社が間に入るのであれば、報酬の支払時期が後日であっても、支払いが滞ることは考えにくいため、そのことが司法書士の心理的な負担となることはありません。

 問題は、相続登記の報酬です。

 一般的な日本のビジネス慣行として、報酬は業務完了後という傾向があります。要は、仕事を完了して初めて請求すべきという考え方です。この慣行が浸透している司法書士にとって身近な業界といえば、不動産業界が挙げられます。

 不動産業界においては、私も従事していたから分かりますが、あくまでも成功報酬が基本です。何かしらの定期契約などがない限り、いくら労力を提供しても、いくら時間をかけても、最終的な契約に至らなければ、依頼者に請求することはまずありません。

 また、税理士や土地家屋調査士といった司法書士に近い資格業も、基本、後払いが多いような気がします。しかし、税理士は、申告時に各種税金を立替により支払うことはなく、所得税等の税金は当事者が金融機関などで直接支払うのが通常です。また、土地家屋調査士においては、そもそも登録免許税が不要な申請も多く、立て替えるといっても、分筆合筆登記で数千円程度ではないでしょうか。

 一方、先払いが通例とされている業界もあります。例えば、住宅会社や建設会社においてはは、建築進行状況に応じて3回程度の分割で支払われる場合があります。また、IT、WEB系の会社であれば支払い確認後に業務を開始する場合もあります。

 

 個人的には、先払いであっても、後払いであっても、双方が納得していれば構わないことだと思いますが、ビジネスにおいては、何となく後払いが当たり前的な空気感があるのも否定できません。また、司法書士の周辺業界、不動産業、税理士、土地家屋調査士などが後払いであることから、尚更、司法書士の報酬についても後払いが前提となりがちな側面があります。

 しかし、司法書士の登記業務においては、高額な登録免許税が発生する場合があります。相続においても、稀に100万円を超える場合もあります。数万円程度であれば、立て替えることも検討できますが、数十万円になってくるとさすがに躊躇してしまいます。さらに、相続登記を申請する際には、それに付随して、遺産分割協議書の作成や戸籍謄本等の収集、その他業務が発生し、かつ、それらは登記申請前に完了していることが通常です。

 以前、登録免許税が100万円近くになった際に、その依頼者紹介元の税理士より後払いを求められたことがあり、登録免許税分だけ先払いとし、登記完了後に報酬及びその他細かい費用を請求したこともありました。しかし、上記のような観点から違和感が残りましたし、依頼者にとっても、2回に分けて清算することは負担となるようにも感じます。

 こうしたことから、私は、相続登記の報酬は、最終的な登記委任状に署名押印してもらう際に、受領することとしています。当然、そこから登記申請を行うため、厳密にいうと先払いとなります。なお、その日が休日等でない限り、そこから1時間以内に登記申請受付を完了します。つまり、売買決済とほぼ同じ感覚です。相続関連の各手続を完了し、後は登記を申請するだけの段階で受領しています。また、依頼者に対しても、すぐ登記をする旨は伝えておきます。

 

 相続登記の報酬請求時期に限らず、登記業務の報酬を、売買決済を除き、一律後払いを基本としている事務所もあるかと思いますが、登録免許税が数十万円などになる場合に、それを立て替えることは、経営上難しい面もあり、また、この方は後払い、この方は先払いなど、依頼者によってその時期を変えることも、執務姿勢としては問題があるようにも感じます。

 司法書士であれば、登録免許税額が高額となる場合に、報酬請求時期をどうすべきかにつき悩むこともあるでしょう。特に、開業した時点で資金的な余裕が無い時期であれば尚更そうかもしれません。相続登記の依頼は、税理士等の他士業からの紹介もありますが、他士業の方は、相続登記に登録免許税が課される旨、また、それが高額となる場合があることなどは、実はあまり知らないかもしれません。そのため、紹介による相続登記を申請する際には、その辺りのことは、事前に紹介者と擦り合わせをしておく方がよいかもしれません。

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