行政法・一般知識の勉強法(行政書士)

行政法の勉強法

 民法と同様に、テキスト記載の内容をまずは完全に暗記することは必要です。そして問題集をやり、テキストの知識を補完するのと同時に、テキスト未記載の過去問知識を吸収します。文章でこう書くと簡単そうですが、行政書士試験において行政法等の勉強は、初学者にとって困難を伴うのが現状です。


 そもそも行政法とは何でしょうか?行政法という法律はなく、行政手続法、行政不服審査法や行政事件訴訟法などの手続法の総称を行政法と言いますが、一般人には行政法など全く縁がないことはほとんどです。つまり知らない知識を一から吸収しなくてはいけません。
 例えば、民法は一般生活の法ですから、行政書士レベルの民法であれば、一般慣習の解釈をもとに容易に理解が可能です。しかし、行政法は馴染みのないことを勉強するという意味で全く異なります。さらに面倒なのは、これが手続法であるということです。
 手続法とは、文字通り手続きを規定した方です。単に「こういう時はこうする」「そういう時はそうする」という約束事が延々と規定されている法のため、勉強をしていても面白みを感じることはできません。つらい暗記作業です。しかし、行政書士試験でメイン科目は行政法ですから、とにかくそれら手続きや規定を覚えなければ試験で話になりません。
 

 もう一つ初学者が、行政法を勉強する上での困難は、問題形式に横断物が多いという点があります。横断物とは、単純に行政不服審査法からのみの出題ではなく、他の行政訴訟法などと比較されて出題される問題のことです。これはつまり、各法において似たような規定が多数存在するということを示しています。そのため、記憶が非常に混乱しやすいのです。
 覚え方ですが、民法と同様にまずはテキストを使用した勉強から始めるべきです。過去問のみでは対応できません。テキストを読まずに、過去問からはいると、難解な手続法なこともあってむしろ混乱してしまいます。
 また、前述の横断物なども整理する必要があります。頻出論点なこともあり、問題集でも多数過去問が掲載されていますから、それを利用して覚えても良いでしょう。
 「独学と予備校」の記事で、行政書士試験においては予備校のメリットは強くはないと申し上げましたが、こと行政法に限って言えば、予備校に行く方が早く理解できることは事実です。初見だと理解に困難を伴う規定等もあるからです。しかし、独学でも何度も読込むことで、それらの理解も進むはずです。ただ、予備校に比べると歩みは遅いため、初見の時点でモチベーションが下がることはありえます。もしそれを恐れるのであれば、予備校をお勧めします。


 行政法においては、テキスト、問題集以外に必要なものがあります。それは各法の条文を見ることです。書籍の行政六法を買う必要まではありません。今は法務省のHPにおいて見ることができるのでそれで十分でしょう。初見の時点でいきなり見る必要はありません。また、法令を完全に覚えようとする必要もありません。ただある程度テキストを読込んで理解が進んだ時点で、各法に目を通しておく方が無難です。テキスト上の説明のみだと論点が十分に説明されきれていない場合もあり、その場合はやはり条文で確認するしかないからです。
 また、本試験においては、条文を読んでいないと解けない問題が出題されることもあります。条文からの出題は、正直なところ「え?そんなこと聞いて意味あるの?」という印象を持つ問題である場合もあるのですが、テキストと条文を並行利用することでさらに理解を進めることもできることと、行政各法は、条文数もそれほど多くなく、それほど負担にはならないことを考えると、やはり条文には目を通した方が良いでしょう。
以下の4法は条文に目を通しておくことをお勧めします。
・行政手続法 46条
・行政不服審査法 58条
・行政事件訴訟法  46条
・行政代執行法 6条

一般知識の勉強法

 一般知識は、政治経済社会7問、情報通信4問、文章理解が3問出題されます(年度によって若干の差あり)。実は、行政書士試験の最も大きな肝はこの一般知識にあると言っても過言ではありません。法令についての問題は、範囲が明確なこともあり、しっかりと勉強すれば必ず点が取れます。しかし、特に政治経済社会の一般知識は予備校のテキストや市販書で全く触れられていない問題が出題されることも稀ではありません。私も総合参考書と一般知識問題に特化した参考書(参考記事:使用した教材)を使用して、記載された情報はしっかりと覚えたにも拘わらず、あやうく足切りされそうになりました。かといって、五万とある政治経済社会の一般知識を全て網羅するなど不可能です。むしろ、他分野の学習時間が損なわれてしまう恐れがあります。


平成24年度 第48問は以下のような問題でした(省略記載)
1.山本権兵衛内閣は、シーメンス事件によって退陣した
2.芦田均内閣は、片山哲内閣を引き継ぎ、昭和電工事件により退陣した
3.自由党を離党した鳩山一郎は日本民主党を結成し、同年末に吉田茂内閣は退陣し、鳩山内閣が誕生した。
4.田中角栄内閣は、ロッキード事件による「田中おろし」がなされ福田赳夫内閣が成立した
5.消費税を導入した竹下登内閣は、おりからのリクルート疑惑で退陣し、あとを引き継いだ宇野宗佑内閣も、参院選挙大敗により退陣した。


 内閣毎の退陣理由および組閣中の出来事についての論点です。問題内容としては、大した内容の問題ではないのでしょうが、この論点については市販のどのテキストにも載っていません。このような問題に対応するには、戦後の全内閣の退陣理由について把握していないといけません。しかし、現実的にそこまでやっていては、時間がかかり過ぎるのです。そのため、政治経済社会においては、テキストに記載の頻出論点をまずは最低限確実に覚えるしかありません。それ以外の上記問題の論点は、勉強しないという割切りも必要です。


 ちなみに私の場合、政治経済社会7問中4問正解でした。つまりある程度割切って、テキスト記載の論点だけは確実に正解するという勉強方法で、最低でも4問程度は正解出来るということになります。


 政治経済社会が7問ということは、残りが7問になります。足切りラインは6問です。政治経済社会が運の要素が強いのであれば、残りで出来るだけ多く正解する必要がありますが、情報通信分野も細かい知識が要求され実は簡単ではありません。私は昨年4問中わずか1問しか正解できませんでした。市販テキストの知識は完全に覚えましたが、テキストに記載のないような論点からの出題もありました。


 司法書士試験と並行しており、実質1ヶ月の受験勉強の中、情報通信分野も限られた時間の範囲でテキストのみしか勉強しなかったこともあって、そのような結果に終わりましたが、しっかりと時間をかけることができれば、条文(個人情報保護法と行政機関個人情報保護法合わせて100条程度です)を引くなどすることにより、政治経済社会よりはまだ範囲が明確な分、正解率を上げることは可能と思われます。


 政治経済社会で4問正解、情報通信で1問正解と、11問中5問正解というひどい結果だった私ですが、救われたのが文章理解で、3問中3問正解という結果でした。
 文章理解は非常に勉強しにくい分野です。能力の向上が見えにくいことも理由の一つです。いくら問題をやっても、暗記ではありませんから、国語力がアップしたかどうかはなかなか分かりません。むしろ、短期間で「接続語がどうだ」、「キーワードがどうだ」など学んでも、点が伸びるようなものではないようにも思えます。
 市販の予備校出版の総合テキストにおいて、文章理解については申し訳程度に数ページほど最後の方に記載されていることが多いのは、まさに勉強のしようがないからに他なりません。かといって総合参考書を謳っている以上掲載しない訳にもいかないため、掲載しているに過ぎないのでしょう。
 文章理解は、もともと本をよく読み、また活字に慣れている人であれば勉強しなくても容易に点が取れるはずです。難易度は高校の国語レベルです。短期間での勉強効果が薄いのであれば、文章理解に時間をかけるより他分野に時間をかけた方が効率的と考えます。 国語力に心配がある方は、政治経済社会、情報通信でなんとか点を取るしかありませんが、過去の文章理解問題に目を通しておくことで、出題形式に慣れることはできるかもしれません。