オンライン推進運動

 最近、とくに河野太郎さんが担当大臣に就任してから、様々な分野においてオンライン化の波が押し寄せている気がします。

 司法書士に関係するところでは、本年2月15日より商登法規則の一部が改正され、代表印の提出が任意になりました。また、3月17日よりは、役員5人以内の株式会社、合同会社の完全オンライン設立登記が24時間以内に処理されることとなりました。何か、是が非でもオンライン化を進めるんだというような国の気概を感じます。

 実際、昨年あたりから、自分でオンラインで会社を設立したという方の報告例もちらほらウェブ上で見かけるようになっています。

 電子証明書などによるオンライン化以前の話しとして、今は法務省のHPを見れば、一般的な登記の申請書の様式が普通にアップされており、そのとおりに申請すれば、一般の方でも登記が出来てしまう時代です。

 インターネットの普及により、これまで専門性が必要だった登記申請手続が、一般の方にも容易なものとして利用され始めているわけですが、オンライン化が進み、各個人が普通に電子証明書を取得することができ、それを日常生活の中でも当たり前にように使用する時代がくれば、よりこうした傾向が促進されるのでしょうか。

 もしそうであるのであれば、司法書士にとっては、益々難しい時代になるようにも見受けられますが、このオンライン化については私自身はそれほど心配していません。

 あくまでもオンライン申請というのは、手続に過ぎず、今でも自分で申請する人は自分で申請しますし、司法書士に依頼する人は司法書士に依頼するのであって、手続きの利便性が上がっても、そこは変わらない気がします。

 先日のブログで、不動産登記が減少しているため、今後の司法書士を取り巻く環境は厳しくなると述べました。それはそのとおりだと思うのですが、かといって不動産登記業務が全くなくなるわけではないとも考えています。競争は激しくなることは間違いないでしょうが、今でも十分すぎるほど以前に比べれば登記件数が減少しているわけですから、今更アタフタしても仕方ないと、気楽に構えています。

 それに、会社設立登記にしろ、相続登記にしろ、どの登記であっても、その前提として、会社法や民法等の法令に精通していることが必要なため、そうした専門家を必要とするニーズは、手続きの利便性とは別のところにあるのも事実です。

 オンライン化が進み、それにより手続の利便性が向上するのであれば、是非進めて頂ければと思いますが、一方で無理に何が何でもオンラインにする必要性もないという思いもあります。

 例えば、実印を完全に廃止した場合、司法書士が関与する所有権移転登記手続においては、売主が電子署名した委任状を、司法書士にメール等で送信し、その署名済書類を登記申請書に添付する必要が生じます。他の書類も同様です。しかし、これは果たして便利でしょうか。今、印鑑証明書は、コンビニでも取得でき、数分程度で発行されます。それに比べ、電子署名の手続等は、明らかに不便です。

 現状のシステムは、問題山積みで、とても使える代物ではありません。オンライン化による手続きと実務上の商慣行などとの乖離が大きすぎるのです。当座のところ、まずはシステムからということなのかもしれませんが、本当の意味での利便性が高いオンライン化はもう少し先になりそうです。

 ところで、こうしたオンライン推進の過程の中で、数年前から法務局より不動産登記のオンライン化(特例方式)の推進を強く求められています。これから開業される方は意外に思われるかもしれませんが、全ての司法書士がオンライン申請をしているわけではなく、今も書面により申請している事務所もあるのが実情です。

 私は、開業直後より、債権動産譲渡登記は当然として、不動産登記も商業登記もほぼ9割以上オンライン申請なので、こうした要望があってあっても、今更感を感じるだけですが、ここ数年の法務局の動きを見ていると、法務局という組織全体が、私のいる地域に留まらず全国的な取組みとして、オンライン化を推進しているような気がしています。

 法定相続情報証明制度や遺言書保管制度が開始された際、ただでさえ大変そうな法務局内の仕事の負担が上がり、職員はさぞ大変なのではと感じました。おそらく、不動産登記件数などの減少も、少なからずこうした業務の負担増を決定した背景にはあるのでしょうが、数年後には、さらに「相続人である旨の申し出制度」も始まることを考えると、法務局の職員が今より効率的な業務を求められているのは明らかです。

 おそらくこうしたこともあって、数年前からオンライン申請を各司法書士に要望していたのではないかと推測します。もちろん、私が司法書士になった7年前位から既にオンライン申請を求められていましたが、最近は、オンライン化に協力しない事務所に対しては、個別に訪問して要望することもあったようで、それがより強い形となって表れていました。

 その要望によりオンライン化が促進された結果かどうか分かりませんが、昨年位から登記の完了日が以前と比べ驚異的に早くなっています。私が開業した当時は不動産登記の完了日は、2週間後などもざらで、平均しても1週間は確実ににかかっていた気がしますが、最近は2日程度でほぼ完了することが多くなっています。法務局によっては、これに当てはまらない法務局もあるかと思いますが、私のいる地域おいては、現状、そのような感じです。

 もちろん、これは私自身がオンラインで申請していることも影響しているかもしれません。法務局内の調査作業は、あくまでも受付番号順に行うことが原則となっているようで、その申請がオンラインだろうが書面だろうが、調査開始の時期はそれに影響されることはないこととなっています。しかし、書面の場合は、まず不動産の情報を取得し、次に申請書の内容を確認し、申請書記載の登記事項を各登記官が手打ちで打ち込む必要がありますが、こうした作業に比べて、オンラインの場合、申請内容をそのままコピペ(するんだろうと思います)できますから、作業スピードが格段に向上するのは明らかです。

 最近では、登記の目的に余計なものを付け加えないようにも依頼があります。例えば、共同担保化されている抵当権の全部を抹消する場合に「抵当権抹消(全部)」などを入れないように求められています。それ以外にも、幾つかの事例で、これまでは許容されていた登記事項の記載方法につき、お願いベースではありますが、引き直しによる統一した記載を求められています。これは、つまりどういうことかというと、登記記録上の目的等も、申請書からそのままコピペし、それが自動的に登記記録に移記されるため、余計なものがついていると、その分作業効率が落ちるということではないかと推察しています。

 とにかく、完了日が早くなったことはよいことですが、あまりに早すぎるので、最初は戸惑いました。所有権移転登記を午前中に提出し、午後に完了したこともあります。こうした即日完了は、小さな法務局では、よくありますが、ある程度の規模の法務局でこれは非常に稀です。

 また、1日、2日で完了するのが当然のため、それが3,4日かかると、今度は逆に心配になります。先日、一般的な売買登記で、計30個の不動産の抹消、移転を申請しましたが、登記識別情報を抹消移転で合わせて60回手入力することが時間的に厳しかったこともあり、やむを得ず書面で申請したことがあります。その際は完了まで5日かかりました。おそらく、不動産の個数に加え、書面ゆえに、オンラインより時間がかかったと理解しています。

 現状、司法書士の職域においても、様々な形でオンライン化の波が押し寄せています。これからの司法書士はこうしたIT化についても順応していかなければならないのかもしれません。法務局の調査が早くなったのも、将来のオンライン化より遥か先のAI化を見越して、今から作業を画一的なものに整えておこうとしているのかもしれません。

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