司法くん(ピクオス株式会社)/開業時の申請ソフトの選び方 

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 以前のブログでお伝えしたとおり、私はピクオス社の「司法くん」を開業時より使用しています。もともと、開業以前より、こうした民間の申請用ソフトは導入することに決めていました。

 私のように未経験の者にとって、当初から自分で申請書を作成するよりも、ある程度の雛形は用意され、それを確認する形式の方が好ましいのは明らかでしたし、作業効率も高まると考えたことが導入の理由です。

 実際に、今でも、こうした民間ソフトを導入したことはプラスであったと感じています。他のサムポローニアや権あるいは2in1などのソフトは、触ったことがないので比べることはできませんが、私にとって、司法くんというソフトは、それ単体でみても、登記業務においては、なくてはならないツールとなっています。

 開業されると、こうした民間の申請ソフトを導入するか、また、どこのメーカーのものを使用するかで迷われると思います。前にも述べましたが、私は、こうした民間の申請ソフトは、開業時に導入するかしないかという議論以前に、導入必須のツールだと考えます。こうしたソフトを入れることで、作業スピードが大幅に向上するのは事実です。費用的な理由から、導入しないという判断をされることも否定はしませんが、時間を買うと考えれば、決して高い買い物ではありません。

 もちろん、仮に、登記業務が全く発生しないのであれば、費用対効果の観点からは不要かもしれません。その辺りはご自身で判断して頂くしかありませんが、一般的な事務所であれば、まず元が取れないことはないと思われます。

 

司法書士用ソフトを選ぶ基準

 各メーカーの各ソフトの元は、法務省の申請用総合ソフトとなります。つまり、元は一緒です。専門ではないため、詳しくは分かりませんが、その申請用総合ソフトとなんらかの互換性を持たせ、かつ、より利用しやすく配慮されているのが民間のソフトです。

 各メーカー毎に、操作の方法は当然に異なりますが、これもOSがウィンドウズである以上、結局のところ操作感覚は一緒です。ソフト毎に、どこのボタンを押したら、何が開くなどの細かい仕様はもちろん異なりますが、どのソフトであっても、操作に慣れてしまえば、使い勝手は同様だと思われます。

 したがって、「何を基準にソフトを選ぶべきなのか」という問いに対する答えは、以下の3つです。

 

ソフト選択の基準

  • 価格(導入費用、年額費用、永続ライセンス等費用)
  • 更新の頻度・迅速性
  • 信頼性・サポートのレスポンス

ソフトの価格(料金体系)

 司法くんに限らず、こうしたソフトというのは、導入時期や各種キャンペーンによって、若干の費用誤差が発生します。そのため、具体的な金額をこちらに記載してしまうと、むしろ誤った情報となってしまう可能性もありますので、金額については記載しませんが、ご容赦下さい。

 司法くんの導入時には、まずライセンス購入料が発生します。ライセンスは、私のときは、「永続型」と「5年型」がありましたが、おそらく現在も同様です。「5年型」を選択すると、6年目に、永続型への切り替えが発生し、そこでまた費用が発生します。「5年型」は、開業時の負担を少なくするために設けられた、いわば、キャンペーン的なプランです。司法くんに限らずどのソフトであっても、比較的リーズナブルな費用で導入できる開業用プランが用意されているようです。

 また、毎年、保守料という名目の費用も発生します。保守料を支払わないことは、おそらくどこのメーカーであってもできません。保守料を支払うことで、無料アップデート及びサポートを受けられるようになります。司法くんの場合、保守料の支払いを止め、使用契約自体を解約しても、一度PC内にインストールしたソフト自体は、その後も使えるようですが、昨今のIT分野の進化を考えると、アップデートが受けられないというのは、こうしたソフトを使用する上では致命的だと思いますので、お勧めはしません。クラウド型の場合は、おそらく、解約すると、その後はソフト自体も使用できない可能性があります。

 開業時の料金プランは、各社毎に異なると思いますが、保守料そのものの料金については、知り合いの司法書士などから聞く限り、それほど変わらない印象です。年一括払いですが、月額換算で5、6千円位でしょう。

 よって、検討すべきは、保守料以外の部分において、幾らかかるかという点です。各社のHP上をみると、実は、その肝心なところの説明がありません。

 以前は、司法くんのHP上には、詳しい料金体系が記載されていたのですが、今は記載がないようです。他のサムポロや権などにおいても同様で、HPを見て、料金を確認することはできません(サムポロはスターターパックという開業時プランの料金記載はあるようですが、これはあくまでも2年のみの料金なので意味がありません)

 こうした、料金プランが記載されない要因の一つに、各社の競争が激しいことが推測されます。実際、私も開業時に司法くんとサムポロの営業を受けました。

 また、時期やキャンペーンによって、金額が異なることも、こうしたソフトではよくあることなので、その意味からも料金をオープンにしないのでしょう。個人的には、同じ内容のサービスであるにも関わらず、相手方や時期によって、料金を変えるといのは、信用上問題があるような気もしますが、現状、私が知る限り、司法書士ソフト業界はそのような感じだと思います。

 さらに踏み込んで説明すると、結局、こうしたビジネスモデルの根幹は、導入料や更新時の料金にくわえて、それ以外の毎年の保守料及びその他費用により利益を挙げるサブスクビジネスです。司法くんにしろサムポロにしろ、一旦、導入すると、後日それを変更することは簡単ではありません。何故なら、実務において、自分が行った過去の申請を確認することはよくあるからです。ソフト変更により、過去のデータが確認できなくなることは業務上の大きな損失となります。特に、クラウド型サービスであれば、尚更、解約後は過去データの扱いがどうなるのか懸念されます。

 よって、これから導入される方は、その点を理解したうえで、開業時の料金だけに拘るのではなく、10年程度のスパンで発生する費用を比べることがとても重要です。

 

POINT

開業時のプラン料金のみで、ソフトを選択するのではなく、長期間のスパンで費用を計算すること

一度、ソフトを導入してしまうと、それを変更するのは難しい(解約後も過去の申請データを確認できるのであれば問題ない)

 私が、司法くんを選択したのは、上記のような事情や料金体系はなんとなく理解したうえで、それでも、当時、他社に比べて、そのトータル費用が低額で、かつ、料金体系も明確で分かりやすく、会社としての信用度も高いと感じたからです。自分が納得した一定金額(つまり、開業時と6年目)を支払えば、あとは費用が発生しない司法くんのプランは魅力的に感じました。

司法くん

 それ以外に発生するのは、毎年の保守料だけです。なお、開業当初から、永続型にすれば、プラン切り替え費用もかかりません。司法くんに限っていえば、一番得なのは、おそらく、開業時から永続型を選ぶことでしょう。

 HP上にそれらの具体的費用の記載はありませんが、導入時に問合せをすれば、具体的な金額は分かると思います。

 他のメーカーにおいては、永久的に保守料とは別に月額で料金が発生する形式もあると聞いています。なかなか、自分の使用しているメーカー以外の料金体系は分からないため、明確に比べることはできませんが、当時、私が司法くんを選んだ理由には、金額面も大きく影響しています。

 

更新の頻度・迅速性

 今日においては、頻繁に各種アップデートが実施されます。ソフト本体のアップデートもあれば、おおもとの法務省申請用ソフトのアップデート、OSのアップデート、また登記情報を取得する民亊法務協会におけるアップデートなども行われます。こうした際に、司法くんなどのソフトもそこに関連づけられているため、必然的にパッチ等のアップデート処理が発生します。

 これまで、司法くんを7年使用していますが、こうした更新速度を遅いと感じたことは一度もありません。むしろ、そのスピードは相当速い方だと思われます。

 通常、各アップデートに関連して、同時に司法くん側のアップデートも行われます。また、ウィンドウズアップデート等で、不具合が発生した場合であっても、2日程度で追加アップデートが行われ、これまでアップデート処理の遅延により問題が生じたことはありません(そもそも、これまでアップデートが遅延したこと自体が記憶にありません)

 また、司法くんには、各自治体の住所データーが導入されていますが、自治体によって住居表示などが実施され、新住所名が発生する場合があります。こうした際にも、いったいどのようにそういうローカル情報を取得しているのか分かりませんが、データが迅速に新住所へと更新されます。

信頼性・サポートのレスポンス

 ソフトにおいては、その信頼性は重要です。結論からいうと、司法くんの信頼性は抜群です。実際に、これまで、司法くんのソフト上で、何か技術的な問題が発生したことはありません。

 しかし、信頼性という面に関しては、各社でほとんど差がないものと思われます。これは、何故かといえば、前述のとおり、各ソフトは、元の法務省の申請用総合ソフトに紐づけられており、そこにプラスαして使いやすくすることが特徴である以上、各ソフト毎に技術面で大きな差は出ないものと推測できるからです。

 サポートに関しては、どうでしょうか。サポートは、技術ではなく、対人間同士のコミュニケーションとなりますから、各社によって差が出やすい分野だ思われます。他のメーカーは知りませんが、司法くんに限っていえば、サポートもかなり優れています。

 技術的な問題のみならず、PCに不慣れで操作上分からないことがあっても、サポートに連絡すれば、すぐメール又は電話で返事があります。また、元の法務省ソフト上で不具合が発生した場合やウィンドウズOS上の不具合など、司法くんのソフトとは別のところに問題の所在がある場合であっても、解決策をアドバイスしてくれます。もちろん、遠隔での操作補助もしてくれます。

 実は、以前は、サポート窓口が電話だったのですが、つい数年前からメール(問合せフォーム)にて問い合わせる形式となりました。正直、面倒だと感じましたが、問合フォームで問い合わせると、混雑状況にもよりますが、早いときには5分以内、遅くてもまず30分以内には電話での折り返しがあります(折り返しは、電話又はメールを選べます)。私は、こうしたフォームを使用した問合せにおいて、ここまで早い対応をするメーカーを他に知りません。

 結局のところ、サポートとは、顧客にどのくらい配慮することができるかに尽きるわけですが、上記のような優れたサポート体制のため、司法くんのサポート対応で、これまでストレスがたまったことはありません。その返答の迅速性、回答の正確性、そして対応の姿勢などを見る限り、各社員の資質というよりも、会社全体としてサポートに相当力をいれて取り組んでいることが伺えます。

 なお、根幹の技術力に関しても、前記更新の速度や、サポート回答の適格性などを鑑みると、司法くんの社内SEが持つ技術力は相当高いような気がします。

司法くん導入のメリット

 司法くんを導入したことにより良かったことを記します。他のソフトは知りませんので、必ずしも司法くんに限ったメリットというわけではありませんが、導入される際の参考にしてください。

作業効率が大幅に向上する

 以前のブログでも記した内容ですが、こうしたソフトを入れることで、申請書を作成するスピードは格段に上がります。特に、登記情報サービスから、不動産の情報をそのまま移記でき、さらに甲区及び乙区の登記名義人、受付番号等もそのまま引っ張ってこれますので、不動産の記載ミスなどが、そもそも発生しません。

 司法くんのHP上に、作業効率が6分の1となるとの説明画像があります。「抹消、移転、保存、設定」とは、建売住宅などの場合でしょうか。私は、この4連件を経験したことはありませんが(参考「珍しい?登録免許税の軽減措置」)、13分の作業時間が2分半になるとの説明となっています。仮に、一からこの申請を行うのであれば、普通に最低でも30分程度は必要でしょうから、それが2分半になるとは考えられませんが、ソフト無しで行う場合に比べて、作業時間が半分以下になるのは事実です。

 また登録免許税の計算も、自動で計算をしてくれます。もちろん、同時に自分で手計算で計算を行いますが、ソフトと手計算両方で計算をすることで結果的にダブルチェックとなりますので、ミスが減少します。私は、これまで単純な計算ミスによる補正を受けたことはありません。

 

過去の記録が容易に確認できる

 私の司法くんには、開業時からの全ての申請データが入っています。過去の履歴を検索することも容易です。また、その際に使用した登記原因証明情報や登記情報なども関連づけられているため、すぐに確認することができます。

 登記業務に関わらず、実務においては、過去に自分が申請した書類を確認したいと思うことがあります。こうした場合に、ソフトを導入していると、その確認作業を瞬時に行えます。

 こうした過去のデータというのは、司法書士にとって、実は大きな財産となります。何故なら、それが自分の経験を示すものであるからです。人間というのは、忘れる生き物ですから、過去の全ての事例を明確に覚えておくのは不可能です。過去事案の書類等を確認し検討することもあり、その際にストレスなく過去データを閲覧できるというのは大きなメリットです。

 一つアドバイスをすると、ソフトの中には、最近はクラウド型のものがあります。司法くんはインストール型なので、積み重なっていくデータも、また、PC内に保存されます。よって、仮に司法くんを解約したとしても、過去のデータは見ることができます。何故なら、所有権は自分にあるからです。しかし、こうしたクラウド型の場合、その内部のデータは、解約した場合に、どうなるのでしょうか。私は、クラウド型サービスを利用していないので、その辺りの規約等は分かりませんが、仮に解約した際に、こうしたデーターも消滅し、また、そのデータをダウンロードすることもできないのであれば、少し問題だと思います。もし、そうしたサービスを利用するのであれば、その辺りは確認しておくべきでしょう。

請求書発行が可能

 おそらくどのソフトであっても、今は、請求書発行も可能な仕様となっているはずです。業務ごとに、請求書及び領収書を発行しなければなりませんが、ソフトで作成可能となります。領収書等は、自分でエクセルで作成できないこともありませんが、デザイン的にもいまいちですし、また、計算も面倒になるところ、消費税、源泉所得税などを反映して自動で計算をしてくれるので助かります。

多数の雛形が用意されている

 正直、メリットに記載すべきか迷いましたが、司法くんには、多くの定型書式、例えば、登記原因証明情報、株主総会議事録などが用意されています。そのため、所有権移転などであれば、ソフト上で、委任状から登記原因証明情報までの全ての書類を作成することが可能となり、作業の迅速性にもつながっています。

 一方で、司法くんに限らず、こうした雛形を作成しているのは、当然、ピクオス、日立といったソフト会社であり、専門家ではありません。よって、どのソフト会社であっても、その定型書式をそのまま使用することはお勧めしません。これは、その雛形が間違っているということではなく、あくまでも、取り掛かりの書式として利用すべきであり、司法書士として、その内容については、専門的知見をもとに、修正、加筆等を行うべきです。

 そのため、定型書式の内容が法的に正しい正しくないというのは、こうしたソフトの評価基準にはならないと考えます。

 そうはいっても、実際の実務において、用意される定型書式が、利用に耐えうるものかそうでないのかは、作業効率に影響する部分ですので、司法くんのそれは、雛形としては十分なものであることは付け加えておきます。

遠隔も可能(但し要アプリ等)

 司法くんは、インストール型ソフトなので、クラウド型と異なり、インストールしたPCでしか操作できません。そのため、外出時に別のノートPCやスマホで、司法くんをダイレクトに操作はできませんが、別のソフトやアプリを用いれば、遠隔操作も可能となっています。私は、最近はあまりしていませんが、数年前までは、よく遠隔で司法くんを操作していました。確かに、クラウド型に比べると面倒なのは事実ですが、そうした遠隔操作もできることもお伝えしておきます。なお、その場合は、ピクオスの担当営業やサポートに質問すると、色々教えてくれると思います。

軽い(動作が軽快)

 PCは、長年使用していると、動作が重くなるのは誰しも経験するところだと思います。私のPCも開業以来使用していますので、7年程度経ちますが、司法くんは、開業当初からのその操作レスポンスに変化なく、軽快に動きます。今年2月頃の大規模ウィンドウズアップデートに影響されたのか、最近、稀に、重いときもありますが、そこまで気にはなりません。

 他のソフトは分かりませんが、比較的、司法くんは、シンプルにデザイニングされているため、動作が軽快な特徴はあると思います。ソフトというのは、PC内のメモリを使用するわけですが、凝ったデザインであるほど、動作は重くなります。ソフトの見栄えを高めることは、技術的には簡単でしょうが、むしろあえて、見栄えより実を取った構成にしている感があります。この辺りは、個人的に好みな部分です。

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