金融機関に提出する際の登記識別情報袋(ビニール)
登記識別情報通知を一般顧客にお渡しする際、特に所有権の場合ですが、画像のような『不動産登記権利情報』と題された厚紙で奇麗に装丁することが通常です。おそらく、どこの地域であっても、同様でしょう。
中には、登記完了証、登記識別情報通知(以下「識別」)などを綴じることとなりますが、この識別を内部にそのまま綴じる地域もあれば、別途ビニールや封筒に入れて綴じる地域もあります。
私の地域では、比較的、厳重に装丁することが多いのですが、一歩隣の県に行くと、この識別を特段ビニールなどにいれることなく、そのままホッチキスで綴じるのが一般のようです。
開業当初、ある借り換えのために、権利証を預かったところ、非常に厳重に装丁されており、中身の登記識別情報を取り出すだけで一苦労ということがありました。また、1年ほど前の売買の際、識別は初期の平成20年版でしたが、結構な筆数1通1通が丁寧に封筒に入っており、しかも厳重にホッチキスとめされており、ホッチキスをはずすことがほぼ不可能であったたことから、売主に了承を得て、中身の識別を表紙の厚紙や封筒を破いて取り出したこともありました。
昔、ある司法書士のブログで、後で使用することを考えずに、むやみに厳重に装丁するのは如何なものか、という内容の主張がありましたが、確かに、後のことを考えずにその場だけを考慮したやりすぎる装丁はよくないなと感じます。
ところで、抵当権設定登記などで、金融機関に識別を持参する際、金融機関所定のビニールを渡されることがあります。ビニール袋にいれて、所定のシールを貼り、日付を記載し、記名押印したりするわけですが、最近、ある金融機関から、この方式を取りやめ、7月以降はそのまま持参するようにという連絡がありました。
実をいうと、多くの金融機関では、既に、識別はビニールなどに入れることなく、そのまま持参すればよい流れになっており、こうした所定のビニールに入れることを求める金融機関の方が少ないのが現状です。
こうしたビニールは、しっかりと封をする折り目が付いているわけではなく、各司法書士によって、封をするために折り曲げる場所も異なり、画一性がなく、ビニールにいれる分厚さもかさみ、むしろ金融機関の内部管理上も大変なのではないだろうか、と以前から感じていましたが、その辺りにも理由があるのでしょう。
開業当初の話しですが、ある金融機関に識別を持参する際に、右も左も分からず、どのように持参すべきかを、担当者に率直に聞いたところ、他の司法書士が担当した識別を見せてくれたことがありました。それは、所有権の権利証のように見事に装丁されており、私もそれを真似て、同じように装丁して持参したことがありましたが、空気感が分かってくるにつれ、さすがにこれはやりすぎだろうと考え、そのまま持参するようになりました。
そもそも、一般顧客であれば、通常は、一生に一度のイベントですし、大切な所有権の権利証でもあることから、きれいに装丁してお渡しすべきとも思いますが、金融機関であれば、膨大な数の識別が集まるわけで、それを各司法書士が、所有権の権利証のように、それぞれ装丁して渡せば、画一性がないため、管理も大変になるだけのような気がします。
昔ドラマで、悪徳業者が、「土地の権利書を渡せ!」と言って凄むシーンが多くありました。こうした影響もあるのか、権利証というと、他の書類よりも重要で、厳重に保管しなければならない印象があるのは事実です。
もちろん、再発行もできないことから、そのとおりであり、大切に保管すべき書類であることは間違いなく、私も、一般顧客に渡す際には、「実印や通帳と一緒のレベルで大切に保管して下さい。」と伝えています。
一方で、識別はパスワードを記載した紙に過ぎずないのも事実です。特に、現行のものであれば、仮にパスワードを知ろうと、下部のミシン目に沿って切り取れば、それはすぐ判明します。したがって、金融機関であれば、ビニールに入れても、そのまま保管しても、防犯上、大した差が生じるとは思えませんし、管理上は、そのひと手間で余計な確認作業が生じることを鑑みれば、ほとんどの金融機関において、ビニールが不要になっている傾向も頷けます。
個人的には、ビニールに入れても入れなくてもどちらでも構いませんが、その作業も少々コツがいり、ようやく最近上手になってきた気がしていたため(そんな作業がうまくなってもあまり意味はないのでしょうが)、少し残念なような複雑な感じですが、おそらく、あと数年もすれば、全国の金融機関でこうした所定のビニールにいれて識別を提出することも無くなっていくのかもしれません。