1つの町名が2つの区にまたがる話

 司法書士にとって、氏名はもちろん住所の確認は非常に気を遣う部分です。自分のミスにより間違ったまま登記されてしまうと、余計な更正登記が必要になり、依頼者にも負担をかけることとなりますし、司法書士も自腹で登録免許税を負担する必要があります。

 これまで、一度だけ、こうした氏名、住所の登記ミスをしたことがあります。ある漢字を正字で登記したところ、依頼者から、住民票の漢字と異なる旨を指摘され、厳密にいうと同じ漢字なので間違ってはいませんでしたが、希望とおりに更正したことがありました。

 名前や住所には、意外と多くの旧字が使用されています。本来登記においては、誤字・俗字であっても正字に引き直して登記することができるとされておりますが、ほとんどの法務局でこうした俗字もそのまま登記できる現在においては、各司法書士は、印鑑証明書や住民票といった公的書類に沿って、そのとおりに氏名や住所を登記することが通常だと思われます。

 いずれにしろ、名前住所表記は、司法書士にとって重要な確認事項なわけですが、先日、ある土地の所有権移転登記にあたり、固定資産評価証明書(通知書)を取得したところ、漢字の俗字、正字の話ではありませんが、その記載に違和感がありました。

 違和感の正体は、住所上の「区」と「町名」が合っていないためでした。そこには所有者の住所として「中区〇〇町」との記載があったのですが、私の記憶では、その町は南区のはずでした。

 ところで、市によっては、固定資産評価証明書上に、個人情報保護の観点から、不動産価額のみ記載されている場合もありますが、私の市においては、所有者の氏名住所も記載されます。いつも同じエリアで登記をしていると、市内の町名であれば、馴染みのある町名ばかりなので、どの町が何区かなども、町名を聞いた瞬間に大抵すぐ分かります。

 「あれ。所有者の住むこの町は南区じゃなかったけな。」

 過去の同町依頼者のデータを確認したところ、やはり全員が南区の住所でした。そのため、この時点では、完全に単純な書類上の誤記だろうと思っていました。

 その評価証明書上の不動産は間違いなく、所有権移転登記の目的となる土地に間違いありませんでしたので、後日問題が生じることはなさそうでしたが、一応市役所に確認してみようと思い、問合せの電話を入れました。

 すると、その〇〇町は、中区と南区の両方にまたがっており、地番何番までが南区で、それ以上は中区になるとのことでした。正直、お恥ずかしい限りですが、これまで全くそんな町があることを想定すらしていませんでした。

 せっかくなので詳しく聞いたところ、私の市においては、この〇〇町以外にももうひとつだけ同じように中区と南区の2つの区にまたがる町があるようでした。また、県外の他の市でも同じような事例もどうやらあるようです。理由は、昔の話なので定かではないそうですが、区分けの際に、河川などがある場合に、その河川に沿って区分けされる場合もあり、その際に町が分割されてしまったとのことです。

 実際に登記する際には、しっかりと住民票などを確認するため、誤った区で登記することは考えにくいですが、2つの区にまたがる町があるという事実を知ることができ、今更感は半端ないところですが、後学のためにも良かったと思う出来事でした。

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