定款認証手数料の引き下げ

定款

 今年の5月頃に、当時の上川法務大臣が、会社等の設立の際に必要な公証人による定款認証手数料について、引き下げを検討しているとのニュースがありましたが、10月に入り、どうやらその具体的金額や施行期日が決まったようです。

 正直なところ、相続登記の義務化ほどのインパクトのある改正でもなく、業務に対しても大きな影響もないであろうことから、すっかり見逃していました。

 こちらの事務所ブログにも記載していますが、資本金額により手数料額を区別し、現状の一律5万円を3万円~とする改正です。おそらく、手数料額の引き下げにより、会社等の設立を推進し、経済活動を活発化したい狙いがあるのかもしれませんが、私個人的には、この改正による影響はほとんどないと思っています。ある国会議員のブログを見ると、公証人手数料5万円が創業の妨げになっているため、この手数料改正を検討したい旨の記載がありましたが、現行の金額がそこまでの創業の妨げになっているとは思えないのが正直な気持ちです。

 会社を設立する人にとっては、設立後の実際の経営こそ大切であって、設立時の発生する費用については、概算で幾ら必要か程度はもちろん把握されているでしょうが、それが1万円程度少なくなったからといって、起業する気持ちを後押しするとは思えません。

 そもそも、会社組織ではなくても、個人事業でも創業はできます。もちろん、中には、取引上、登記した会社組織であることを求められることがあるのも承知していますが、公証人手数料額が高額であることが、創業を妨げているという話は、あまりというか全く聞いたことがありません。

 前述のとおり、今般の手数料引き下げの背景や効果については、少し疑問がありますが、一方で、手数料を引き下げること自体については、肯定できる部分もあります。

 これまで何件も会社を設立してきましたが、定款認証に際し、司法書士が作成した定款をそのまま訂正等をしないで認証する公証役場もあれば、細かい日本語的な修正までチェックしてくれる公証役場もあります。この辺りは、各公証人次第です。

 司法書士としては、前者であれば、自分が作成した定款が内容的に問題がないと判断されたとも捉えることもでき、それは業務遂行上の自信にも繋がりますが、何の修正も反応がないと、本当にしっかり確認しているのかなと思う部分も正直あります。

 大抵は、司法書士が専門家として作成した定款に大きな修正を求められることはほぼありません。そのため、多くの場合、ルーティン的な流れで認証まで進むため、この認証手数料としての5万円は、業務そのものの手数料金額としては、如何なものかと感じることもありました。

 確かに、公証人という立場の資格者である第三者が認証する行為自体が大切なことも事実ですが、一律の金額ではなく、業務内容に応じた柔軟な金額設定があってもよいとも感じます。

 今般の改正で、資本金の多寡に応じて、3段階(3万、4万、5万円)の料金となりますが、多くの会社が家族経営で、その定款内容も、司法書士により若干の内容に差があるにしろ、大枠は一緒であることを鑑みると、むしろ発起設立と募集設立で区別するとか、あるいは、会社の機関設計により区別するとかの方が、業務手数料としての意義に沿う気もします。

 一人会社や家族会社のいわゆる最低限の機関設計会社であれば、資本金の多寡に限らず2万円程度でよいと思いますし、詳細な定款規定を設けているような会社であれば、公証人手数料が仮に10万円でも、定款内容確認業務及び認証業務の対価としては適切な料金となる場合もあるかもしれません。

 

 いずれにしても、来年より、この改訂料金が適用されそうです。

 

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